コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.78 )
- 日時: 2013/10/21 01:05
- 名前: チャルトン (ID: FX8aUA2f)
第4話 よく分からなくなったラベンダーは知恵熱を出してしまった
あの遊園地の日からもう一週間がたとうとしていた。
いつもと変わらない日々……いや、変わったことがいくつかある。
「ねぇね、小倉くん!!!」
愛奈が永輝に話しかける。
あれから愛奈はよく永輝に話かけるようになった。
犬猿の仲のような二人だったのに愛奈の態度は今までとまったく違う。
ズキンッ
……その姿を見て傷ついている自分がいる。
「・・・・」
まぁ、永輝は常に無視をしているのだが。
「あ、上村!その資料職員室まで一緒に運んでくれ。」
「わかりましたー。」
上村くんとあれからは普通に会話している。
もう好きじゃないからか、緊張しないで話せるようになった。
「実衣菜、聞いてるー?」
ハッ
「あ、ごめん。なんだっけ?慶ちゃん。」
そして、慶ちゃんがうちのクラスによく顔を出すようになった。
今だってクラスに急に入ってきて私の前の席に腰を下ろして他愛ない話をしだしたのだ。
廊下とかでも見かけると声をかけてくるようになった。
……それとは対照的に、永輝が私に話かけることがなくなった。
私から話しかけようと思ったりもしたがいざとなるとなかなか勇気がでないのだ。
“俺やっぱやめよーかな。お前のこと好きなの。”
ズキンッ
あの言葉を思い出すたびに胸が苦しくなる。
「……はあぁ…………」
盛大なため息をつき、ふと視線に気がついた。
「わっ!ど、どうしたの慶ちゃん。そんな目で見て。」
「実衣菜、さっきから俺の話全然聞いてない。」
ぎく。
「そ、そんなことないよー。あははは…は。」
自分でもわかる。
今、私の顔めっちゃひきつってる。
「ふーん?じゃあ、なんの話してたでしょーか?」
ええぇえ!?
「き、昨日やってた銀行員のドラマの話!で、でしょ?」
「はあぁ。」
次は慶ちゃんが盛大なため息をついた。
「ぜんっぜん違うよ」
…ごめんなさい。
「俺が話してたのは、り…」
キーンコーンカーンコーン
休み時間の終わりを告げるチャイムがなる。
「やべっ!この話はまた今度な!」
そう言って慶ちゃんは一目散に教室を出ていった。
…と 思いきや戻ってきた。
「なんか悩んでることとかあったら聞くから遠慮なく相談とかしろよ!」
それだけ言ってまた急いで自分の教室へと向かったのだった。
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.79 )
- 日時: 2013/10/22 20:22
- 名前: チャルトン (ID: BoToiGlL)
チュンチュン
すずめの鳴き声がかすかに聞こえたような気がした。
『今日は晴れのち雨。とても晴れてるからといって傘を忘れないように!午後4時頃からどしゃ降りになりますよ。』
「へぇ。どしゃ降りだって!実衣菜、傘忘れないようにね」
「はあぁ……」
朝ごはんが喉を通らない。
「なによー、そんなため息ついて。朝御飯も全然食べてないし。そんなゆっくりじゃ学校に遅刻しちゃうわよ」
お母さんが私を見て言う。
だって…永輝の言葉とか行動のこととか考えちゃって…
はあぁ……。
「とにかく!学校には遅刻しないようにね!」
「…うん。」
ちらりと時計に目をやる。
8…25…
ん?!
8時25分?!
「やばっ!」
私は急いで立ち上がり鞄を手にとって玄関に直行。
「いってきまーす!」
そう言って私は玄関のドアを開けた。
「いってらっしゃい。」
バタンと玄関が閉まる。
「あ!あの子、傘忘れてる!あんなに雨が降るってニュースで言ってたのに」
お母さんはもう誰もいなくなった玄関に向かって呟いた。
「ま、いっか!」
そう言ってリビングへと戻って行った。
+++++++++++++++++++++++++++++++
キーンコーンカーンコーン
「ギャー!なっちゃった!」
グランドをおもいっきり走ってる時にチャイムがなってしまった。
「これ、絶対遅刻じゃん…」
一人でボソボソ言いながら教室に向かった。
ガラッ
教室のドアを開けるとクラスの皆が私を見る。
うう…恥ずかしい。
「はい、辻久保遅刻!」
先生が私を指差し言う。
「珍しいな辻久保が遅刻なんて。もう一人はよくあるけどな。」
ははは
と私は苦笑する。
…ん?
もう一人?
「すいませーん。遅刻しましたー。」
棒読みの声とラベンダーの香りが背後からした。
「いい加減にしろよー、小倉。今年に入って何回目だ?遅刻するの」
先生が怒り気味に言う。
「数えてないからわからないっすよ。そんなの」
カチン
この言葉が先生の気にさわったのだろう。
「……お前ら、放課後、資料室に来い!」
「え!?」
「遅刻した罰だ」
先生はそう言って私と永輝に早く席につくようにと言った。
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.80 )
- 日時: 2013/10/23 22:59
- 名前: チャルトン (ID: sicBJpKD)
放課後。私は永輝と資料室に向かっている。
この状況、喜ぶべきなのかどうなのか。
わからない。
「・・・・」
さっきから永輝は黙ったままだし…。
ただひとつ、わかることは
私の心臓はうるさいということ。
資料室につき、ドアをガラッと開ける。
そこにはすでに先生がいた。
「遅いぞ二人とも。」
「すいません。」
一応、謝っておく。
「まぁ、座りなさい。」
そう言って椅子を指差す先生。
私と永輝はのそのそと椅子に座った。
「二人にはここにある資料をまとめてもらう。」
先生は机の上に山のようにある資料を見て言う。
これをまとめろと言うのですか。
この大量の資料を。
「まとめると言ってもただホッチキスでとめるだけなんだがな。簡単だろ?」
いや、簡単で単純な作業かもしれないがこの量は……
「遅刻の罰がこれだけなんて安いもんじゃないか。な?」
な?って……。
嫌だよ、こんなことするの。
パチン
パチン
って、ええぇえ!?
「おお!小倉は威勢がいいな!もうやり始めてる。辻久保もさっさとやりなさい。」
バサッ
私の前に紙の束が大量に置かれる。
「じゃ、先生は他に仕事があるから!それが終わったら帰っていいぞ!」
え!?
は…ちょっと!
先生、私と永輝を二人にするんですか!
「じゃあな!」
ガラッ……ピシャン
シーーン
パチン
パチン
この空気の中、私はいったいどうすればいいのでしょうか?
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.81 )
- 日時: 2013/10/24 18:41
- 名前: チャルトン (ID: /6p31nq7)
パチン
パチン
さっきからホッチキスの音だけが資料室中に響き渡る。
「・・・・」
相変わらず永輝は黙ったままだ。
よし!
私から、話しかけよう。
「あ、あのさ!」
で、でも何を言おう?
えーと…もう!
「ぜ、全然終わんないよね、これ!」
「・・・・」
む、無視…?
いや、一応想像はしてたけどやっぱ傷つく……。
パチン
パチン
「このままだと夜までやることになりそうだし…」
私は負けじと話し掛ける。
「・・・・」
パチン
パチン
「全部、永輝のせいなんだからね!永輝が先生を怒らせるようなこと言うから」
冗談混じりでそう言った。
ボソッ
「…じゃあ来なければよかったんじゃね?」
「…え?」
「こうなることはだいたい予想できたんだし。」
話してくれたと思ったら冷たい言葉で…。
「別に俺だけに任せて帰ればよかったじゃん。」
…最初、私はそうしようかなって思ったりもした…。
でも…でも永輝と一緒なら…って……
私の足は自然と資料室に向かっていたのだ。
「……っ…」
やだ…。
泣きそう……
ガタッ
え?
永輝が急に立ち上がり、鞄を手にとった。
「帰るぞ。」
「えっ、でもまだ終わってな…」
目の前にはきれいにホッチキスでとめられた紙がたくさんあった。
あの量をほとんど一人でやったというの…?
「早く。行くぞ。」
そう言って永輝は資料室を出た。
私も急いで出る。
“帰るぞ”
その言葉が単純に嬉しかった。
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.82 )
- 日時: 2013/10/28 20:41
- 名前: チャルトン (ID: en4NGxwI)
“一緒に帰ろう”
そう言われてるみたいで…。
結構早く終わったと思ったが案外時間がかかったらしく残っている生徒はもういなかった。
玄関に近づくにつれてザッーーと音が聞こえてくる。
「雨…?」
やけに暗いと思ったら雨が降っていたのか。
……て、私傘持ってくるの忘れた……。
ど、どうしよう!
そうやって固まっているうちに永輝はどんどんと進んでいく。
傘立てから自分の傘をとってる姿を見て驚く。
「永輝が傘持ってきてるなんて…!」
永輝は傘なんて持ってくるがらじゃないのに。
「…おい。早く行くぞ。」
傘を広げて雨に辺りながら言う。
一緒に…帰っていいんだ……。
その言葉が私の鼓動を早くする。
でも……
「私、傘持ってくるの忘れちゃったから雨がやむのを少し待ってみるよ」
私がそう言うと永輝は怪訝な目で私を見た。
「おまえ、あんなに天気予報で雨が降るって言ってたのに持ってこなかったのかよ」
「いや…それどころじゃなくて…。ははは…。」
永輝のせいでね!
「バカだな」
永輝は私の方に戻ってくる。
「貸してやるよ」
「え?」
「じゃあな」
永輝は私にひらきっぱなしの傘を渡すと雨の中走っていってしまった。
「ちょ、待ってよ!」
私の言葉なんて無視をして永輝は行ってしまう。
「風邪ひいても知らないんだからね!」
ザッーー
私の声は永輝に届いたのだろうか。
それとも雨にかきけされてしまったのだろうか。
一緒に…帰れると思ったのにな…。
まぁ、いっか!
私は永輝の開いたままの傘を見つめて大事にさし、雨の中家まで走った。
雨だからか空気は冷たく、火照ていた私の顔を冷ますのにはちょうどよかったのだ。
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.83 )
- 日時: 2013/11/02 19:33
- 名前: チャルトン (ID: 8BUvyu0j)
翌日。
キーンコーンカーンコーン
今日はチャイムを自分の席で聞けた。
遅刻することなく学校にこれたのだ。
逆に早く来すぎたくらいで。
昨日のお礼を言いたくて…
…永輝に早く会いたくて。
でもまだ永輝の姿は見あたらない。
まぁ、よく遅刻する人だからあり得ることなんだけど。
ガラッ
来た!?
「はいはい、みんな静にしろよー。出席とるぞー」
なんだ…先生か。
「お、今日は辻久保遅刻してないな!」
私を見て言う先生。
私は苦笑した。
「今日の欠席は小倉だけか。風邪らしいぞ。みんなも気を付けるように!」
「え!?」
ついつい、大きな声を出してしまった。
「なんだ?辻久保。そんなに小倉が休みで悲しいのか!」
先生が冗談混じりに笑いながら言う。
まわりが茶化す。
「ち、違っ…!!」
顔がみるみる赤くなる。
「じゃあ辻久保、プリントを帰りに小倉のところに届けてくれ。頼んだぞ!」
にこにこしながら先生は言った。
「先生!私が届けますよ!」
愛奈が手をあげて言う。
愛奈が私の方を見てにこりと笑う。
“私がかわりに行ってあげる”
“いいでしょ?”
と口パクで言う愛奈。
愛奈…永輝のこと嫌いなんじゃないの…?
あんなに仲が悪かったのに……。
まさか、愛奈も永輝のこと…?
…愛奈がライバルじゃ勝てるわけないじゃない。
嫌だ。
「私、行きます!」
イスから立ち上がり私は言った。
チラッと愛奈を見てみる。
「!!」
“あのとき”と同じ表情だ。
愛奈とはじめて恋愛の話をしたときの“顔”。
上村くんが好きと言ったときの“顔”だ。
見たことのないくらいの笑み。
笑っているのだ。
愛奈は何を考えてるの…。
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.84 )
- 日時: 2013/11/13 22:46
- 名前: チャルトン (ID: 8uCE87u6)
放課後になり、私は先生に永輝の住所を教えてもらった。
風邪って…私のせいだよね?
昨日、永輝は傘をささずに雨の中帰ったから…。
差し入れとか持ってった方がいいかな?
そう思って近くのスーパーに寄る。
風邪にいいフルーツ系を少し買い、永輝の家に向かった。
ついた場所は大きめのマンションだった。
「ここの503号室か…」
エレベーターで5階まで行くとすぐ前が503号室だった。
ドキドキ
「き、緊張する…」
ぼそりと一人で呟く。
「…よしっ!」
私は緊張で震える手でおそるおそるインターホンを押した。
ピンポーン
「・・・・」
シーーン
あ、あれ?
反応がない。
もう一回押してみる。
ピンポーン
「・・・・」
やはり反応がない。
まさか、留守…?
もう一回っ!
そう思い、インターホンに手をのばした時だった。
ガチャッ
ドアが開いた。
「うわっ!」
ビックリした…。
私はとっさに手を引っ込める。
ドアから永輝が顔を出した。
「…実衣菜?なんでここに…」
「ぷ、プリントを届けに…!」
持っていたプリントを見せる。
永輝は私からプリントを取った。
「それだけか?じゃあな。」
そう言ってドアを閉めようとする。
「ま、待って!」
私はドアをこじ開ける。
「なんだ…よ…まだ用が……」
永輝がふらつく。
「永輝……?」
バタン
永輝は私に覆い被さるように倒れた。
「ちょ、ちょっと!?大丈夫?!」
私は永輝を起こそうとして腕をつかんだ。
「あつっ!」
すごい熱だ。
私は悪いと思いながらも永輝を支えながら家に入る。
バタンッ
ドアが大きな音をたてて閉まった。