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Re: お嬢様の隣に変態王子。【参照5000 感謝】 ( No.582 )
日時: 2013/11/30 22:44
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: zS76SbFU)

時雨の突然の告白に、華恋は固まったまま動かなかった。
目を見開き、驚いた表情で時雨を見つめていた。

「……お前が望むなら、二度とお前の前には現れない。話しかけもしない。だから俺は、今のうちに気持ちを伝えておく」

華恋の手をそっと放し、放心状態の華恋の目をしっかり見つめて、はっきりと言った。

「俺は、誰よりもお前が好きだ。前から、ずっと……」

「……てよ」

動かなかった華恋の口から、今にも消えそうなか細い声が発せられた。

「やめてよ……お願いだから……やめて……!!」

そう訴えた華恋の目には、涙が滲んでいた。

「……わるい。嫌だよな。俺なんかに告白されても」

拒絶された時雨は、悲しそうな笑顔を浮かべた。
それをみた華恋の目には、よりいっそう涙が溜まった。

「違う……嫌なんかじゃない!! 本当はずっと言ってほしかった!!」

華恋は拳を固く握り締めて、力の限り叫んだ。
誰にも言えなかった、本音を。

「私本当は、時雨が好きだったぁ……っ!! でも、由美のことも好きだからっ……二人に幸せになって、ほしくて……っ」

みるみる時雨の目が開かれていく。
泣き叫ぶ華恋の頬に手を伸ばしかけて____やめた。

「……俺は、お前を好きになる資格なんてないんだ」

「え……?」

「誰も失いたくないから、誰とも関係を持たないと決めた。お前とも、学校の奴等とも」

だから……雫は思った。
だから嫌いになるような暴言を吐き続けてきたのだと。


二人とも、同じだった。
二人とも、戦っていた。

一人は、誰も失いたくないがためにたくさんの人を遠ざけ、傷つけ、そのたびに自分の心と戦っていた。

一人は、誰も失いたくないがために一人の愛しい人を護るために戦っていた。


「……でも、前に進まないと始まらないんじゃないですか?」

口を開いたのは、雫だった。

「私が言えることじゃないですが……由美ちゃんは、もういない。それはもう戻ったりしない。だから……」

雫の脳裏に浮かぶのは、もう会えないであろう母の、ぼんやりとした顔だった。

「だから、今目の前にいる人を、愛さないとだめです」

雫の一言で、華恋は泣き崩れた。
ごめんなさい、ごめんなさい、と何度も呟きながら。


すれ違い続けた二人の心は、ようやく繋がった。