コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 子羊さんとシェアハウス〜獣君の甘いこと〜【8/24更新】 ( No.100 )
- 日時: 2013/08/25 18:39
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
企画番外編【皓雨と夏祭り】
「麻耶ちゃん、麻耶ちゃん、麻耶ちゃん!」
「——う……こ、皓雨君?」
現在朝4:30分。ちなみに夏休みである。目が覚めると(というより覚まされた)皓雨君が横にいた。
「今日、これ行かない?」
そう言いながら見せてきたのは一枚の紙。そこには——
「『兎乃川夏祭り』?」
「そう! 他の皆は『面倒臭い』って言うし……ここは使える麻耶ちゃんの出番だろうと思って!」
何だろう、すごく失礼なことを言われた気がするぞ。
「まあ……いいですけども」
「本当? 良かったー。あ、あとこんな所で寝ないようにね」
……こんなとこ?
そして、自分を見て改めて気付く。なぜか私は広間のダイニングテーブルの上で寝てしまっていたのだ。机の上には合同祭の資料。完璧に寝落ちしたな……。
「じゃあ、ちゃんと浴衣着てくるんだよ?」
「え? ま、待って、こ……」
皓雨君、と呼びとめる前にもう部屋に戻ってしまった。どうしよう、すごく面倒臭い……。
「……御苦労さま」
一部始終を見ていたのか紫季さんがキッチンから現れ、一言だけ告げていく。
もう少し早く出て、フォローしてほしかったのに。
6:40分、白地に水色の花が飾られた浴衣を着、てシェアハウスを出る。皓雨君が来る、と言っていたけれど……。
「麻耶ちゃん」
声のする方へ振り向く。
「似合ってるね。——じゃあ、行こう?」
自然に手を取られる。何だろう、この兄弟は女性の扱いに手慣れてないか?
プスッと、ダーツの的に矢が刺さる音がする。
「お、お嬢ちゃん3回目だよな……? 真ん中当たったの」
「3回やれるのなら3回嫌でも当たっちゃうので」
皓雨君が驚きの目でこちらを見てくる。
「すごいね! 意外な特技発見……」
景品のジュースを袋に入れて持ちながら、今度は射的に向かった。
「じゃあ、今度は僕の番かな」
そう言いながら、皓雨君は射的屋のおじさんにお金を渡す。
5秒もたたないうちに、熊のぬいぐるみを撃ち落としてしまった。
「は、はやい!」
「へへー麻耶ちゃんに負けてらんないからね」
ぬいぐるみは私にくれた。
その後、私の要望で綿あめを食べながら、ベンチに座って花火を見る。
「今日はありがとうね、我儘聞いてもらって」
「いえいえ、私も楽しかったので」
これは事実だ。皓雨君と来ることができて良かった。
綿あめをまた口に含む。その時、綿あめを持ってた手が引っ張られ、皓雨君の方に持って行かれた。
「一口頂戴?」
「あ……は、はい」
びっくりした。一瞬何が起こったのかと思った。
そう思ったのに、皓雨君は今度は私の身体ごと引き寄せた。
開いている方の手で私の唇に触れる。その指を自分の口元へよせる。
「——甘。まあ、甘い方が好きだけど」
思考回路が停止する。恥ずかしすぎるだろう、これは。
「直接すれば、もっと麻耶ちゃんの味わえるかなあ?」
「は……はいっ!?」
直接って……!
意地悪な微笑みをやめて、にっこり笑い、皓雨君は言う。
「嘘だよー。びっくりしたー?」
「……」
「……あれ、麻耶ちゃん?」
私は顔を上げられない。
だって、こんなに真っ赤な顔、見せられるわけがないから。
完