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- Re: 子羊さんとシェアハウス〜獣君の甘いこと〜【9/28更新】 ( No.139 )
- 日時: 2013/09/30 20:53
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
第6章 三つの思い
「蛍さん」
私は蛍さんの部屋に行き、手を後ろに隠しながら、近づく。
「何? もう夕食の時間?」
「いえ、違くて……」
そう言いながら、蛍さんの顔の前に写真立てを持っていく。
蛍さんの顔が固まることに気付きながら、私は言葉を続ける。
「蛍さんと皓雨君に挟まれてるこの真ん中の女の子って誰ですか?」
その写真盾に飾られた1枚の写真。そこには右には蛍さん、左には皓雨君が、そして——真ん中には一人の少女が映っていた。
「何で……お前がそんなもの持ってんだよ……っ」
声を少し震わせながら蛍さんは言う。
「あなたの私に片づけろと言ってきた箱に入っていたんですよ。まさか、これで怒ったりしませんよね」
蛍さんが頼んできたのだから。
立ち上がったと思うと、私を押し倒し、無理やり写真立てを奪い取った。
「お前には関係ない写真だ! はやく出ていけ!」
切羽詰まった表情で暴言を吐かれる。
「——妃夏?」
押し倒されながらその声の主に気付いた。
紛れもなく皓雨君の声だった。
「何で蛍が妃夏の写真を……」
そう言うと、蛍さんは私から離れ、皓雨君に背を向けて黙ってしまった。
「答えろよ! 何で蛍なんかが妃夏の写真を残しているんだよ!」
責められても蛍さんは相変わらず黙ったままだ。
「蛍に……妃夏を残す権利なんてない!」
そう言い残し、皓雨君は走って行ってしまった。
「——お前も早く行けよ。どうせ、皓雨のこと追いかけるんだろ」
そう言われ、私は立ち上がる。
私は、思ったことを言う。
「私が言えることではないけれど、あなたには、忘れてはいけない権利があるんじゃないかと思いますよ」
そう言った瞬間、蛍さんがこちらを振り向くのが分かった。
だけど、私は素早く部屋を出て、皓雨君のところへ向かう。
「どうしてお前がそんなこと知って——」
その声に気付かないふりをして。