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- Re: 子羊さんとシェアハウス〜獣君の甘いこと〜【更新(7/17)】 ( No.38 )
- 日時: 2013/07/21 20:57
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第2章 子羊さんと蛍君です。
「あのさ、一体お前はなに様なわけ?」
思い切り不機嫌そうな蛍さんがコーヒーフロートをスプーンでぐるぐるにしながら言う。これも私が奢ってるんだけども。
「管理人様で、生徒会長様です」
私はにっこりと皮肉を込めながら言う。
「はあ……合同祭とか別にどうでもいいじゃん」
「よくありません。私が会長になった以上、今までみたいにはさせません」
今までの合同祭はすべてがだらしなかった。こちらの会長もあちらの会長も。
私が会長になったからには、なにもかもを改善していくつもりだ。
「なんでそんなに必死になるのか俺には分からない」
「……愚問ですね」
その言葉で蛍さんが明らかにいらついたのが分かった。
「皆を楽しませる、ただそれだけじゃないですか」
蛍さんは驚いたような顔をしながら手の動きを止める。
フロートはもうすべて溶けていた。
一瞬の沈黙があり、彼は急に立ちあがる。
「え、なにして」
「帰る」
そう言った蛍さんに慌ててついていく。会計を済まし、店を出た。
そうこうしてるうちにもう家に着いていた。玄関に入った途端、私の腕を引き、自分の部屋へと連れて行く。
私は戸惑いながらもされるがままにしていた。
「あ、の……?」
そう言う私のことも無視し、押し入れの中から白い箱を取り出す。その中からなにやら白い紙を取り出し、私に投げつけた。
何百枚もあるのではないか、と思う程のそれは、合同祭のアンケート。
「……なんでこんなもの取っておいて……」
「それ、ほとんどが『楽しくなかった』っていうやつだぜ。生徒の9割が合同祭なんてどうでもいいと思ってる。会長は、自分で動くだけじゃなく、人を使うようになれなければいけない」
「……どういう意味ですか」
「……お前に協力してやるってことだよ。面倒臭いから俺が仕切ることはない。ただお前が言ったことをやってやるだけだ」
私はその瞬間、自分でも考えられないほど馬鹿のように叫んでいたと思う。
やっと、やっと少しだけ進歩があったと思ったんだ。
「考えててくれたんですね。そんな何人ものアンケート、キチンと残しておいて」
「……別に」
少し赤み帯びた顔を隠しながら蛍さんは言う。
「……あは」
笑ってしまった私の方を見つめ、怒ったような顔——というより意地悪い顔で蛍さんは静かに告げた。
「麻耶」
「な、名前——!」
名前を呼んでくれた!
「お互いのこと知りたいな。知るためには——……」
急に蛍さんが近づいてくる。
「こういうのがはやいと思うんだけど?」
いつの間にか私はベットの上に居た。
「は、ちょ、蛍さん?」
「脱げよ。全部全部、心の中まで見せろよ——」
制服のリボンに触れられそうになった時、私は蛍さんの手を払いのける。
「へ、へ、変態!」
そう言いながら扉まで逃げる。
「真っ赤だな」
そう言われ、私の顔は倍赤くなっただろう。
「も、もう戻りますから!」
蛍さんの部屋を出る。……そして、もう一度入った。
「夕ご飯の時に来て下さいね」
バタンと音を立てながら扉を閉めた。
第2章 完