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Re: 子羊さんとシェアハウス〜獣君の甘いこと〜【更新(7/21)】 ( No.53 )
日時: 2013/07/30 15:07
名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)

 第3章 子羊さんと皓雨君の話。

 夜……といっても深夜12時。
 ここで皆様に問題です。
 なぜ深夜12時、私の部屋に皓雨君がいるのでしょうか?
 答え、それは私にも分からない。
「えらいねーこんな時間なのにまだ勉強してるなんて」
「……そうですか?」
 私は典型的な努力型なので勉強しないと駄目なのだ。
「それで……なにしに来たんですか? こんな遅くに……」
 そう聞くと、皓雨君は曇りのない可愛らしい笑顔で言う。
「麻耶ちゃんと仲良くなるために来たの」
 思わず動揺する。
 その顔でそのセリフは少し心臓に悪い。
「僕さあ、蛍のことあんまり好きじゃないの」
「——え?」
 急に新事実を告げられる。それも、笑顔で。
 なんだろう、兄弟喧嘩的な何かかな?
 でもそれは、そんな簡単に思っちゃいけなかったんだ。
 その後の皓雨君の表情を見て感じた。
「どうしてですか? なにか気に入らない所でも……?」
「——全部。なにもかもがだよ」
 ゾッとした。
 笑顔なのに、冷たい目。
 憎い、と思っているのが痛いほど伝わってくる。
「だからさあ、僕、壊しにきたの」
 そう言いながら、いきなり押し倒される。
 声を上げる暇なんてなかった。腕を頭の上に持っていかれ、片腕で捕えられる。華奢な皓雨君の腕にこんな力があったとは。
「や、やめ……」
「なんでだろうね」
 急に悲しい声で皓雨君が呟く。
「蛍は、なんで、妃夏がいるのにっ……」
「——ひなつ?」
 彼が口に出した名前を呼び返した私の声に反応するように皓雨君はハッとする。
 まるで「やってしまった」という顔で。
 抑える手に力が入る。
「痛、いっ……」
「……ごめんね、麻耶ちゃん」
 そう言いながら皓雨君のもう片方の手で私の首筋に触れる。指でゆっくりとなぞられる。
 怖さよりもなによりも思ったことはただ1つ。
 ——なんでこんなに悲しそうなんだろう。
 そんな悲しそうな目でなんでこんなことしているの?
 私は首を振る。その瞬間、抑えていた皓雨君の腕の力が少しだけゆるむ。それを利用し、私は自分の腕を自由を得た。
 そのまま、勢いよく皓雨君に抱きついた。