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Re: 子羊さんとシェアハウス〜獣君の甘いこと〜【8/18更新】 ( No.92 )
日時: 2013/08/22 18:06
名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)

 企画番外編【バレンタインデー】

 私が通う女子高では、夏に不思議なイベントが起こるらしい。私には全く理解できないイベントが。
「麻耶! やってきたね、真夏のバレンタインが!」
「……こんな暑い季節に何やってんだか……」
 バレンタインデー、それは普通は二月に起こるイベントだが、この学校では二月、そして八月に存在するため、一年に二度あるのだ。
 バレンタインデーは友チョコ、義理チョコを渡す日。しかし、明後日の真夏のバレンタインデーでは本命チョコを渡すのだ。こうなった理由は、いつかの生徒が人気者の男子にチョコレートを渡そうとするが、二月に渡してしまえば、人気者なだけあり、たくさんある中の一つになってしまう、と考え、夏に渡すことにしたのだ。
「向かいの男子校の生徒にあげる子が多いよねー」
「一番身近だしねえ……」
「南沢兄弟にあげる子たちが続出しそうだね」
 南沢兄弟……蛍さんと祐夜さんのことだろうか。ちょっとした有名人みたいだ。実は四人兄弟で皆顔が整っている、なんて思わないだろうな。
 ちなみに、私がシェアハウスの管理人をしていることを、弓禾は知っているが、住人が誰か、ということは言っていない。
「まあ、麻耶も作れば?」
「あげる人いないもん」
 つまんない、というような顔で弓禾は見つめてくる。
 仕方がないだろう。いないから。




「……今年もやってくるよな、あれ……」
 夕食を食べている時、祐夜さんが口を開いた。
「『あれ』? ……ああ、真夏のバレンタイン!」
 皓雨君が納得、という風な顔をしながら手を叩く。
「毎年すごいことになってるからな」
 蛍さんは喋りながらも黙々と食べている。
「すごいこと、ってなんですか?」
 私は持ちかけたコップを置き、問う。
「……チョコ地獄なんだよ……! 校門の前にはたくさんの女子、女子、女子! そして、男子からの羨ましさの目線……そして何より、甘ったるいチョコ! 嫌いなのにさあ……」
「チョコ、嫌いなんですか?」
「甘いだろ、絶対やだ」
「毎年、僕らが協力して食べてるんだよ」
 祐夜さん、蛍さん、紫季さんを順に見回して、皓雨君は言う。
「今年は、蛍も入学したし、倍だろうな」
 げ、と小さく呟く蛍さん。
 女の子にモテるのも……大変なのか。


 そして——当日はすぐにやってくる。