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- Re: LOVE・CRAZY【サイカイノアト クール×余命宣告 】 ( No.24 )
- 日時: 2013/07/20 15:31
- 名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)
『お菓子な恋 パティシエ×常連客』
プロローグ>>0
日が経つに連れて、恋もお菓子も妄想が膨らんでくる。
甘くて甘くて、幸せだ。
それをパティシエさんと重ねちゃうなんて───我ながら、バカみたい。
───まぁ、諦めるつもりはひとかけらも無いけど。
***
「いらっしゃいませ。───あ、今日も来てくださったんですか」
わたしがお洒落な扉を開けると、中で待っていたのは、やはりあの人だった。
今日はいつもみたいな制服は着ていない。私服?
……かっこいい。
「あの、今日は」
「…ああ。ちょっと気分転換に、とオーナーから言われたもので。……ダメでしたか?」
「い、いえ!とんでもない」
ダメ、なんて全然ない。
すっごく似合ってる…。
私服姿、見れて良かった。
「…あ、何か食べていきますか」
「! は、はい」
そう言うとその人はにこっと笑って、厨房へ入って行った。
……ああ、今日は何を作ってくれるんだろう。
「ちょっと待っててくださいね」
「はい」
彼は厨房に入ったから、わたしはベランダ側にあるテーブルへ向かった。
椅子に座って、少しの緊張をほぐすため息をつく。
改めて店内を見渡すと、やはり小洒落た雰囲気が漂っていた。
壁なんかもう真っ白で、所々に小さく薔薇の絵が描いてあるのが凄い。
唯一欠けるところといえば……、彼の姿が見えなくなっちゃったところかな。
自分でそう思って、自分で勝手に恥ずかしくなってしまった…。
あ、ちなみに、わたしと彼とはただのパティシエと常連客ではない。
ちょっと特殊。
それはというと、本当は自分で頼んで作ってもらうんだけど、わたしと彼とでは、注文はいらない。
彼が作ったアイデアを、わたしが味見するみたいな。
そんなロマンチックな状況、恋しないはずがないよね。
「できました」
わたしがニヤニヤしながら待っていると、彼が運んできてくれた。
わたしは「やった」とまるでおやつを待つ子供みたいに目を輝かせる。
……まあ、子供以外はあながち嘘ではないのだけれど。
「…ぅわ、すご……!」
彼が置いたお皿の上には、わたしの想像を遥かに越えたものがあった。
真っ白なスポンジケーキに…これは、海…?
綺麗に波を打ったそのカタチは、芸術を超越していた。
「今の季節は」
「夏」
「そうです。なので、海をイメージしたものを作ってみました」
『作ってみました』ってコレ……、ノーベル賞もらえるんじゃないの…!? ←違う
「すごいですよこれっ!ぜひ商品化するべきですっ!」
「いや…、はは。まだまだですよ。色々と失敗しちゃいましたし」
「大丈夫ですって!」
なぜか興奮して、彼を見る。
彼は目を細めて、「では」と笑った。
「これからも、ずっと。
僕と一緒に、生み出していきましょうね」
『僕と一緒に』。
それはつまり……。
「……っはい…!」
これからも、この店の常連客でいます。
───甘いお菓子と、それを作るパティシエの甘い彼に会うために。
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