コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君の隣 【リクエスト募集中】 ( No.52 )
- 日時: 2014/04/02 01:27
- 名前: 音葉 (ID: CE4YyNoS)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
キャンプファイアの準備も終わり外に出てみると日は落ち、辺りは暗くなっていた。
キャンプファイアの火は予想していたものより遥かに小さく、そのサイズはよくサンマなどを焼くでお馴染みの七輪と同じぐらいのサイズであった。
「実はちゃんと誘えてんのかな。」
「大丈夫だよ。ねえ、そろそろ始まる時間だけどどうする?」
いつの間にか、全校生徒参加のフォークダンスが始まる時間となっていた。そのため多くの生徒達がペアを作り終え、キャンプファイアの周りに円を囲っていた。
「全校参加って言われてるけど別に点呼する訳じゃないから、参加しなくてもばれないし。」
「まあ、そうだけどね。」
「いっそのこと、一緒に踊っちゃうか?」
ニヤッと奈美が笑って涼香の肩に左手を置き、右手でキャンプファイアを指していた。
「恥ずいから、いいよ!遠慮します!」
「何本気にしてんの!冗談だって。」
2人はキャンプファイアから少し離れた、校舎の近くのベンチに座って騒いでいたが、時間は刻々と迫りキャンプファイアの周りの男女ペアはさらに増えていた。
そんな光景を見ながら涼香はふと昼間のことが頭の中をよぎった。
高木のことである。
昼間にあれほど人気があったから、フォークダンスのペアなんてとっくにできているんだろうなどと思い、少し心が痛み、霧がかかったようにモヤモヤした気持ちになった。
膝を抱え、うずくまった。
すると後ろから肩を叩かれた。
「村田、見かけなかったか?片付け終わってから見失って……。」
辺りが暗くなって顔がはっきりと見えなかったが、涼香には声で高木だとすぐにわかった。
「……いえ、見てませんが。」
「何落ち込んだ顔してるんだよ。……あ、わかった。こんなギリギリまで一人でいるってことは、ペアがいないんだろ?」
「そうですよ!どうせ先輩はペアなんて出来てるんでしょ。いいですね。早く行かないと待ってるんじゃないんですか?」
涼香は拗ねたように高木から目をそらした。
「あ?俺ペアなんて決めてねえよ。よくわかんねえ奴は断ったし。」
「え……!?」
その言葉を聞き、涼香の心を覆っていたモヤモヤが一気に消えて行った。
「丁度いいじゃん。俺とペア組まねえか?今年で最後だし、お互い1人ぼっちはさみしいだろ?」
「……嬉しいんですけど。」
そっと隣に座っている奈美に視線を送ると、涼香の意思を理解したようにニヤッと笑った。
「うちのことは気にすんなって、適当に誰か見つけるからさ。お2人さんでどうぞ。」
「……いいの?」
「いいってば、大丈夫だよ。」
「ありがとう。」
奈美に心からの感謝を告げ、涼香と高木はキャンプファイアの方へと向かって行った。
「あいつは一歩遅かったな。」
去っていく2人の背に呟いた奈美の声は誰にも聞かれることは無かった。
キャンプファイアの火に近づいていくと、高木が足を止めた。
「谷口ちょっと待ってて。」
「はい?」
近くにいた女子の先輩に高木は話しかけに行った。
「滝、村田見なかったか?」
「見たんやよ。」
「何処で見た?」
「中庭で充ちゃんと話があったんから一緒にいたんよ。」
「じゃあ……。」
「でも、今頃そん時一緒におった、かわええ女の子とペアでも組んでどこぞの火のとこにおるんやない?女の子の反応があんまりかてかわええから、うち少しいじわるしてもうたん。」
高木の言いたいことを先に読み、かぶせるように言葉を続けた。
「そうか……って、お前何してるんだよ。」
反論をしたところ、滝のペアであろう男が呼んでいた。
「ほな、呼んどるから行くで。」
「あぁ、ありがとう。」
ペアの元に戻った滝は楽しそうに会話を始めていた。
「なんかお似合いですね。滝さんですっけ?ペアの方と本当の恋人みたい。」
2人の雰囲気は周りのペアとは違っていた。周りは少しよそよそしい感じや緊張している雰囲気が漂っているが、2人はどこか落ちついた雰囲気であった。
「あの2人は本当に恋人同士だから。」
「本当ですか!?」
するとグラウンドに設置されていたスピーカーから曲が流れ始めた。
「始まったな、行くぞ。」
「あ、はい!」
少し前を歩いていた高木が振り返り、涼香の手を握り引っ張った。
いきなり手を握られ、体温が一気に頬に集まり真っ赤になった。
「……どうせ踊るとき手繋ぐからいいだろ。」
雑な言い方であったが、高木の頬も薄らと赤く染まっていた。
緊張で体がガチガチであった涼香は何度も高木の足を踏んでしまい、ぎこちないステップを踏み続けていたが、涼香にとっては夢の中にいるようでふわふわとした気持ちで内心浮かれていた。
すぐ後ろには高木が触れられるほど近くにいる。
自分よりも大きく少しごつごつした手、そんなことを思い涼香のドキドキは最高潮に達していた。
たまに高木から足を踏むなと耳元で注意され、耳に吐息がかかりくすぐったくも恥ずかしく、そのたびに涼香は顔を真っ赤にし俯かせた。