コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君の隣 【リクエスト募集中】 ( No.58 )
- 日時: 2014/06/08 23:12
- 名前: 音葉 (ID: CE4YyNoS)
「ごめんなさい……私勘違いして、充君困らせちゃって。」
「いや、大丈夫だよ。少し滝さんも意地悪してたからね。」
「……そう?」
実は自分が勘違いしていることに気づいてすぐに謝った。
そんな実を見て村田は必死に宥めた。
誰から見ても明らかに、実は落ち込んでしまっている。
「ところで、実ちゃんは俺に何か用事があったんじゃないの?」
「そうなんだけど……。」
いざとなると、さっきとは違う恥ずかしさがこみ上げ俯いてしまった。
心に決めたことは、2つある。
今日しか伝えることが出来ない、伝えるというよりもお願いごとになってしまうかもしれない。
もう1つは今日でなくてもいいのだが、村田は3年いわゆる受験生でありインターハイもある。文化祭が追われればこれらに追われてしまい、忙しい日々を送ることになるだろうし、そんな村田のことを邪魔したくない。
だから、今日じゃなくてもいいとわかっていても伝えたい。
さっきの2人が楽しげに話している姿をみて少なからずも、嫉妬をしていた自分がいたと実感していた。
私はそれほど充君が好きだ
例え振られてもいい。充君の邪魔にならないうちに気持ちは伝えたい。
そんな気持ちが実を勇気づけていた。
「あのね……フォークダンスのペアになってください。」
2人の間にわずかな沈黙が訪れる。
「うん、いいよ。俺も誘おうかなって思ってたんだ。」
「本当!?本当にいいの……?」
「本当だよ。逆に実ちゃんはもう誰かとペア組んじゃったかなって少し不安だったかもね。」
不意打ちのように言われ、実は村田を見つめた。
またもや沈黙が訪れる、どう反応していいかわからず、村田を見つめたまま硬直してしまった実と少し頬を染めた村田。
そんな沈黙を破ったのは実だった。
「誘ってくれた子もいたけど、断ったの。充君以外の人とは嫌。」
きっぱりと言い放った実の言葉を聞き、村田も意を決した。
「だって私……」
「ごめん、もし嫌だったら突き飛ばしていいから。」
「え?」
少しの間をおいて続けようとする実の言葉を遮るように言った村田に実は驚き、村田の言葉を考える暇もなく気づくと、村田の腕の中にいた。
混乱する頭の中で、必死に今の状況を考えるが全く答えが浮かばなかった。
「俺は、実ちゃんが好きだよ。」
頭の上から聞こえてきた声に、驚きしか出てこなかった。
村田の声はさらに続く。
「最初は幼馴染としか見てなかったけど、だんだん可愛くなってく実ちゃんを見て、どう接していいかもわからなくなったんだよ。」
「充君……。」
村田は実に気持ちを伝えるために言葉を選んでゆっくり話していた。
その声はとても優しかった。
「俺から離れたけど、高校生になって実ちゃんが俺に一生懸命話しかけてくれて嬉しかった、同時に気づいたんだよ。」
実は村田の心臓が自分の鼓動と同じように早いことに気づき、村田の顔を見ようと村田の胸に預けていた顔を上げた。
「いつの間にか実ちゃんを幼馴染としてじゃなくて1人の女の子として見てたんだよ。だから、俺は1人の女の子に惹かれていたんだよ。」
「もう1度言うね、俺は実ちゃんが好きだ。」
村田は優しく実を見つめていた。その頬は暗がりでもわかるほど赤く染まっていた。
実は村田の気持ちに応えようとしたがなかなか言葉が出ず、口をパクパクと開けていた。
「いきなり言われて驚いたし、困っちゃうよね。返事はいつでもいいから。」
そういって腕を解こうとする村田に実はとっさに村田の背中に腕を回しギュッと抱きしめた。少しでも自分の気持ちが伝わるように。
「み、実ちゃん!?」
「離さないで……、返事なんて決まってるもん!」
少し深呼吸をして今自分の中にあふれている気持ちを村田に届けようと決めた。
「私はずっと充君だけが好き……大好き!」
やっと交差した2人の視線。
村田の手がそっと実の頬に触れた、村田の顔が少しずつ近づいてくるのを感じ実は目を閉じた。
次に訪れた感触は唇ではなくおでこだった。
「今日はここで我慢しとくね。こっちがよかった?。」
少し意地悪な笑みで自分の唇を人差し指で叩く村田に自分が心の中で期待してたことに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「別に!充君の意地悪!」
「まあ、そう言わず……ね。もう始まっちゃてると思うから行こうか。」
差し出してきた手を実はためらいもせず自分の手を重ね指を絡めた。