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Re: 君の隣 【参照700突破感謝!コメント大歓迎!】 ( No.66 )
日時: 2014/08/01 01:57
名前: 音葉 (ID: IpkVD1bf)

目を覚ますと真っ白な天井が少しぼやける視界に入ってきた。
気づくと自分は保健室のベッドの上にいた。
驚いて起き上がろうとすると眩暈がした。とっさに手で頭を支えた。

記憶を辿ってみるが体育館に入ろうとしたところまでしか残っていなかった。その後の記憶がないということと自分がベッドに横になっていたという事実から自分は倒れたということはすぐに推測できた。

「あぁ、起きた?まだ横になっておきなさい、熱中症で倒れたんのよ。脇のテーブルにスポーツドリンク置いてあるから飲んでね。」

「ありがとうございます。」

スポーツドリンクを飲みつつ、自分がどうやってここまで来たのか気になった。

「あの……、うちはどうやってここまできたんですか?」
「高木君が血相変えてあなたを運んできてくれたのよ。そういえば帰りは送ってくれるそうよ、だからまた帰り際に来ると思うわよ。」
「そ、そうですか……。」
「かっこよかったわよ!お姫様抱っこよ!先生憧れちゃうわ。」

高木への感謝と共に恥ずかしさがこみ上げてきた。
おそらく自分の周りにはたくさんの人がいたはずだった、その中お姫様抱っこで運ぶなど当本人も恥ずかしさが込みあがっているだろうし、自分自身も恥ずかしい。後で何を言われるだろうか……。

というよりも重くは無かっただろうか……など考えが頭の中を巡っていた。

今の話を聞いたせいでせっかく下がった熱がまた上がりそうだった。
ふと自分はどれだけ寝ていたのかと時計に視線を向けると15時を回っていた。
大体走り終わったのが10時過ぎだったのでお昼も食べず約5時間寝ていたようだ。

「そろそろ部活終わるんじゃないかな。荷物はそこにあるから、お昼に女子たちに運んできてもらったから着替えたら?」
「はい。先生、ありがとうございます。夏休みなのに……。」
「大丈夫よ。今日は保健室の片付けと掃除をするつもりで来てたから、気にしないで。」

先生が指さした方向に一式荷物が置いてあった。
おそらく奈美と実が持ってきてくれたのだろう。

「ちょっと職員室行ってくるから当分帰ってこないかも。もし高木君がお迎えに来たらそのまま帰っちゃってもいいからね。」
「わかりました。」

先生が保健室を出ていくのを確認し、制服に着替えることにした。
部活で着ているトレーニングウェアは汗でしっとり濡れ、少し重く感じた。

制服に着替え終わりベッドに浅く腰を掛け足をぶらぶらと動かしていた。

ドアを開ける音が聞こえ振り向くと高木が入ってきた。
お姫様抱っこの件を思い出してしまい、とっさに視線をそらし俯いてしまった。

「もう、大丈夫か?家まで送ってく。」

涼香の荷物を肩にかけさっさと保健室から出て行った。慌ててその背中を追いかけていった。

帰り道、沈黙が続いていた。
高木にお礼を言いたいのだが、何となく声をかけづらくためらっていた。

「谷口が倒れてるの見て、本当驚いた。林と小林も凄い心配してたぞ。」
「ですよね……。明日謝らなきゃ。」

「あの!保健室まで運んでくれてありがとうございます。その……お姫様抱っこでと聞いたのですが……。」
「あ、うん。べ、別に気にするな。」

珍しく高木が動揺していることに気づき、横を歩いている高木の横顔をうかがうと真っ赤に染まっていた。

「先輩、照れてます?」
「う、うるさい!病人は黙って歩いとけ。」

高木は涼香の手首を掴み、歩く速度を少し遅めた。

「え!あ、あの。」
「減らず口が叩けるようだけど、途中で倒れて家に着いたとき谷口がいませんでしたってことになったら困るだろ?」
「そんなことにはなりません!」

掴まれた手から高木の温もりが伝わり、心が温かくなった。
涼香を掴んだ手は家に着くまでしっかりと握られ離されることは無かった。