コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実の妖精王国【親記事見てね】 ( No.153 )
- 日時: 2014/03/03 21:27
- 名前: 夕衣 (ID: VI3Pf7.x)
04 本当の気持ち
[マータside]
「私はミリア・ヴェート。ブーケとレン君の友人で、今は喫茶店で働いています」
「俺はビリー・フォッキィ。俺も、ブーケとレンの友人だ。今は大工をしている」
「私はブーケ・シャンル。レンは、私の彼氏よ。現在の職業は、画家」
あれ…?ブーケさんの右手に…赤いものが…
まあ、今はおいとこう。
「確か、ブーケさんは第一発見者でしたね」
「ええ」
「その時の状況を教えてください」
エリオスさんは、真剣な目をしている。
「私は、彼と一緒にこの美術館に来ていたの。まあ、デートね。それで、私が絵に夢中になってたら彼が消えてて…それで、館内を駆け回って、倒れている彼をこの部屋で見つけたってわけ」
わたしは、ブーケさんの話をぼんやりと聞きながら、何気なーく外を眺めた。
……ん?
「あっ!」
フェル君っ!?
「……はっ!」
わたしは思わず、窓越しにフェル君に向かって音波を出していた。
お願いっ、気づいて……!
[フェルside]
「あとは、リレークたちに任せましょ」
僕はうん、とサリシアの言葉にうなずいた。
しかし、その直後、足を止めた。
音波を……感じるからだ。
感じる方を見ると、そこにはマータがいた。彼女の声も、聞こえる…
“フェル君…助けて…”
めったに魔法を使わないマータが音波を使うとは、相当な緊急事態に間違いない。
「…よし」
僕は、美術館に向かって全速力で走った。後ろから、みんなもついてくる。
「ここか…」
正面玄関のドアを開けた先。
立ち入り禁止のテープが貼ってあった。その向こうに警察のなかに、エリオスさんの姿も確認できた。
僕はそれをくぐり、マータの元へと向かう。
「フェル君!」
マータはすぐにこちらに気づいたようで、僕の方へ駆け寄ってきた。その瞳には、涙がうるんでいる。
かっ、かわいい……
僕は赤くなった顔を見られたくなく、マータから顔を背けてしまった。
「フェル君…?」
「あ、や!で、どうしたの?」
「事件なの。実は…」
それは、驚くべき内容だった。
「……わかった。エリオスさん、至急荷物検査を行って下さい」
「う、うん…」
突如事件モードになった僕を、マータとエリオスさんは不思議そうな目で見た。
それよりも、何かわかるかもしれない。
「では、ミリアさんからお願いします」
「は、はい。私の荷物は、これです」
彼女がおずおずと差し出したのは、茶色いバッグ。なかには、財布、携帯、ハンカチ、ティッシュが入っていた。
「特に、凶器と言えるものはないですねぇ…」
「当たり前です」
ミリアさんは、自信満々といってのけた。
「次、ビリーさん」
彼は、ウエストポーチから財布を出した。
……左手で。
「次、ブーケさん」
彼女は、大きなバッグをテーブルの上に置いた。
「財布、携帯、あとは画材セットね。いい作品があったら、スケッチしようと思って」
「中身を確認させてもらってもよろしいですか?」
「ええ」
カチャ。
中には、パレット・絵の具・雑巾・筆・スケッチブック・定規が入っていた。
彼女の画材セットを開けた手が右手だったから、彼女はおそらく右利きだ。
「赤い絵の具が…ずいぶんと残っているようですが」
「それは、私がほとんど赤を使わないからよ」
「そうですか、ありがとうございました」
今の言葉…
[マータside]
「うーん…特に、凶器と呼べるものはなかったけどなぁ…」
そう言ってエリオスさんは、苦笑を浮かべた。でも、フェル君は何かわかってるみたい。
「……エリオスさん」
フェル君が突如、そう言った。
「ん?」
「もう一度、現場を見せて下さい」
「わ、わかった」
ガチャリ。
「はい」
フェル君は、遺体に駆け寄り何かをいろいろと調べていた。無論、手袋をはめて。
しかも、そのひとつひとつの動きに、無駄がない。
かっこいい…
わたしは、素直にそう思ってしまった。
やっぱりわたし、フェル君のこと…
好きなんだ。