コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実の妖精王国【オリキャラ募集再開】 ( No.230 )
- 日時: 2014/03/09 18:51
- 名前: 夕衣 (ID: 6nOSsJSp)
07 危険予知
アリサちゃん……アリアちゃん……
どうか、無事でいて……
そう祈りながら、あたしたちは走り続ける。あの2人の目的を知る前に、まずは彼女らの安全を確認しなければならない。
「ったく、アイツらどこで何してるんだ…!?」
「しょうがないじゃない。まだ北のほうしかあたってないもの」
優斗は、それを聞くなり大きくため息をついた。まあ無理もない。相当走りまわってまだ半分と少ししかあたってないって言われたんだから。
「大丈夫……じゃないね、少し休憩しようか」
「ああ…」
優斗はそばにあった切り株に腰を掛ける。せっかくの座り場所を取られてしまったあたしは、ぐるっとあたりを見回した。
「わあ、おっきい……」
最初に目に入ったのは大きな杉の木。抱きついても足りないような太い幹、きれいな木目。人間界にはない美しさがあった。
よく見ると、その木の枝には数羽の小鳥が止まっていた。羽根の色はピンクやオレンジという、とても幻想的な色をしている。
こんなに素敵な木には何か特別な名前がついているだろうと思い、あたしはこの木の名前を調べた。
---〈アンドゥ杉 あんどぅ-すぎ〉---------------------
グリアーナ北西部に位置する森に生える樹齢600年を超える妖精王国最古の杉の木。その力強く美しい容姿や貴重な自然の生き物として妖精王国自然遺産に登録されている。そのためかグリアーナには観光客が多く、年々それが途絶えることはない。また、アンドゥ杉を見に来るためだけに遠いところからやってきている妖精も数多くいる。
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「年々それが途絶えることはない……?」
あたしは不思議に思った。グリアーナ北西部に位置する森といえばここだ。今あたしはアンドゥ杉のすぐそばにいる。本来ならばこの辺りは観光客でいっぱいのはず。なのにここにはあたしと優斗の他に誰ひとりとして見当たらない。何か……アリサちゃんたちと関係があるのだろうか。
「おい」
「わっ!?」
ジュースと間違えてチューハイを飲んでしまったとき並みにびっくりして振り返る。そこには優斗がいた。
「…なに?」
「いや…何してんのかなって」
どうしよう。さっきのこと、優斗に言おうかな……
あたしが何か迷っていることに気がついたのか、優斗が顔を覗き込んできた。わ、近いって!
「なんか相談したいことあるだろ」
「……やっぱり?」
「わかるに決まってるだろ。何年一緒にいると思ってんだ」
「はいはい。で、あのね……」
あたしは優斗にさっきの記事のことも含め、いろいろと相談し始めた。
───身の危険も知らないで。
*
「はぁ…やっぱりいないね、2人とも」
未陽は息を切らしている。それは翔太も同じだった。喉が渇き過ぎていて、痛い。咳をしてもなかなか治らない。長い時間ひたすら長距離走をしていたようなものだから、スタミナが切れかかっている。
「僕、もう一回電話してみる」
そう言って翔太は手に持っていたe-phoneの電源を入れた。すると、その途端に画面が切り替わり、着信音が鳴り始めた。
ぴー、ぴー、ぴー……
「だ、誰から!?」
未陽に問われ、翔太は画面をもう一度見る。そこには……
『非通知設定』
彼は通話ボタンを押すかどうか迷った。しかし、相手があまりにもしつこく鳴らしてくるため、諦めて電話に出た……いや、出てしまった。
「も…もしもし」
『やあ』
その声を聞いた途端、2人は凍りついた。今の身体の疲れも吹き飛ぶほどに頭がぐるぐると嫌な方向に回転し始める。
受話口から流れてくる、その声。到底、アリアや絵梨とは似ても似つかない、不気味な、全く別のものだったのだ。まさに、悪者や犯罪者が出すような……2人は、それを一瞬で見抜いていた。
「お前は、誰だ!?」
翔太は激しく問う。相手が、それに答えることはない。それどころか、誰もが頭を真っ白にさせるようなことを平気で言い放った。
『──お前らの大事な大事な友人を連れていった。返して欲しければ、そこにいる“絵梨”とかいう人間界の娘を渡せ。この条件をお前らが受け入れるかどうかは自由だ。しかし、その場合姉妹の安全は保障できないがな……ふっ』
「な…なんだって!?」
ツ───……
通話が切れたことを合図する音がむなしく響くなか、未陽の大きな瞳から涙が一粒こぼれていった。
♪後書き♪
お久しぶりです
しばらく留守にしててすみませんorz
実際にわたしもジュースと間違えてチューハイ飲んじゃったことあるんですよ!←バカ
さて、ここから話は少しずつ暗くなって行きます……