コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実の妖精王国【オリキャラ募集再開】 ( No.233 )
- 日時: 2014/03/20 20:17
- 名前: 夕衣 (ID: VI3Pf7.x)
08 心配
♪〜♪〜
着信音が鳴り始めた。どうやらテレビ電話のようだ。相手が翔太君だということを確認し、あたしは通話ボタンを押す。
「はい、もしもし。どうしたの?」
『ちょっと優斗に変わってくれるか?』
「うん、わかった」
あたしは何にも疑わずに優斗に携帯を渡す。彼は怪訝そうな顔をして自分のことを指差した。あたしが頷くと、携帯を耳に当て、あたしから離れるようにして翔太君と通話を始めた。
*
「どうした?……絵梨には聞かせられない話だろ」
優斗は冷静かつ絵梨に聞こえないような小声で問う。
『ああ。実は、つい1、2分前に犯人と思われる人物から電話があったんだ』
「犯人からの電話…?」
『確か、絵梨を渡さないとアリアたちの身が危ない…みたいなことを言ってたな』
「な、なんだと!?」
さすがの優斗でも、冷静にではいられない。彼が仲間だと思った者への想いやりの気持ちは、人一倍強いからだった。
それが今回は幼なじみである絵梨。優斗が彼女へ抱く気持ちは他のものとは比べものにならないぐらい特別なものだ。だからなのかいつも以上に頭が働き、そして彼はあることに気がついた。
「……でも、犯人はかなり絞られるぞ」
『え?』
「とにかく、話は会ってからだ。じゃあ、アンドゥ杉の根元で待ち合わせよう。絵梨には、適当にごまかしとく」
『わかった。くれぐれも気をつけてね』
「ああ」
*
タタタタ……
優斗は電話を切ったらしく、あたしの方へと駆け寄ってきた。顔が真っ青で、あたしと目を合わせるたびにすぐにそらしてしまう。なんだろう、いつもの優斗じゃない。あたしは急に心配になった。
「優斗」
名前を呼ぶと彼はギクっとした顔でこちらを見た。あれは……何か隠し事をしている時の顔だ。長年の付き合いからか、あたしにはすぐ分かる。
「なんだよ」
「さっきの電話、なんだったの」
「そっ、それは……」
そして、うろたえ始める。彼だってあたしには隠し事ができないこと、きっとわかっているはずだ。隠し続けるとどうなるかも知っていると思う。
「隠したって無駄なんだからね」
「……絵梨」
いきなりあたしの名前を呼ぶ。あまりにも不意打ちすぎて腰を抜かすところだった。そして優斗はあたしのことをじっと見つめる。彼のきれいな漆黒の瞳に吸い込まれそうになった。
「お前には、言えない」
きっぱりと言い切られてしまった。なんかもうさっきの瞳に言い返す気力まで吸い取られてしまったようだ。あたしは力なく返事をする。
「……そっか」
───こんな広い森の中、何が起こるかわからないというのに。