コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 真実の妖精王国【mystery in the forest】 ( No.247 )
- 日時: 2014/04/09 16:02
- 名前: 夕衣 (ID: VI3Pf7.x)
11 秘密の作戦
みんなが優斗のもとから離れていく。彼の“隠し事”作戦会議は、ようやく終わったようだった。それをずっと待っていたあたしは体力的にも精神的にも疲れていた。
「あっ、絵梨……その、ごめんな」
駆けて来た優斗をあたしは無言で見上げる。ごめんな、ということはあたしに悪いことでもしているのだろうか。
「ううん、別に」
また、素っ気なく答えてしまう。
ほんとは、誰かに慰めて欲しいのに。
誰かと一緒に、笑っていたいのに。
困った笑顔で別に、と言ったあたしを見た未陽は、突然パチンと手を叩いた。まるで、この場の空気を払うかのように。
「絵梨への質問ターーイムッ!!」
「……へっ?」
予想に反して、耳元で大声をあげられた。当然、耳も塞いでいなく、き────んと嫌な音が頭中に響いていた。気持ち悪い。
それより、なぜ今質問タイムを行うのだろう?
未陽以外のみんなも、何かの準備に取り掛かっている。
「なに、これ?」
あたしは質問タイムでテンションが上がっている未陽を無視し近くにいた琴ちゃんに尋ねた。重そうなものを運んでいる。
「え、あ、そ、それは……」
やはり大慌てで言葉が詰まっている。すると、あたしの半径5メートルの辺りをなぜかぐるりと一周していた優斗が足を止めこちらを真面目な顔を向いた。
その口が開かれる直前だった。さわぁっと少し強い風が吹き、彼の言葉は葉がかすれる音で途切れ途切れになってしまった。
「そ………まえ……も……めだ…」
「えっ?」
聞き返そうとしたときにはもういなかった。
「ちょっと、絵梨!し・つ・も・ん・た・い・むっ、始めるよっ!」
「あ、はーい……どうぞ」
はっきり言って、全くやる気ない。
「第1問。好きな動物はっ?」
「……うさぎ」
「第2問。信頼できる人の人数はどれくらいーっ?」
「……15人くらい」
……さて、彼女とあたしのテンションの違いが分かっていただけたところで今の状況を説明しよう。
未陽は、あたしの答えをどっかから持ってきた黄色い名前入りのメモ帳にこれまたどっかから持ってきたオレンジ色のシャープペンシルで書き込んだ。君はあの……某青タヌキか?
「よし。じゃあ次行くよー!
………っ!?」
もうひとつ、何か聞きたかったらしい。しかし、その茶色い瞳を大きく見開き、優斗のところへ何か言いに行ったということは、もっと重大な何かがあるということ……
それが何かなんて、わからない。
ふと空を見上げると、いつの間にか紫がかったオレンジ色をしていた。その不思議な色からは、“隠し事”のヒントが見えそうで見えなかった。
*
「優斗君っ!大変、超大変だよ!」
「落ち着け未陽。何があった?」
優斗の冷静な声を聞き、未陽は思わずほっと息をつく。そして、自然と落ち着こうと思えた。
「絵梨に、質問タイムしてたらね、彼女の後ろに帽子を目深にかぶった怪しげな女がふたりいたの」
「……どうして女だって分かったんだ?」
優斗の眉間にしわがより、表情も一層険しくなっていた。声には出さないが、彼も少々動揺しているふうだった。
「体型的にもそうだったし……」
そこまで言った未陽の頭に一筋の電流が走る。彼女は事件の重大な事実に気付いてしまったのだ。
そして、彼女はそうでないことを祈る。
「それに……ふたりとも……」
未陽は意を決して息を吸い込んだ。
真実を口にする勇気をつけた。
「……『三つ編み』してた」
それを聞いて優斗と翔太も、彼女の予測を感じ取った。顔が青ざめていく。未陽の目に至っては、薄く涙の膜が貼られている。3人とも、信じられないという面持ちだった。
────しかし、彼らの予想は当たってしまうこととなる。