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- Re: 君と進む未来なら【圭太編 更新しました】 ( No.106 )
- 日時: 2013/12/16 20:42
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【圭太編 第八話】
翌日も、その次の日も、私と圭太は夜行活動を続けた。
圭太は完全に力を使い慣れ、かなり手強い悪霊も容易く祈祷できるようになった。
そして、圭太が表情を変えるたび、私は自然と胸が高鳴っていた。
こんなにも自覚症状が出てしまったのだから、この気持ちの正体も
認めざるを得ない。
私は圭太のことが…
八月二十四日。
夜行活動四日目。
この日の真夜中も、私と圭太は町を歩いていた。
ふと圭太が呟く。
「そういえば、あれから九頭竜のやつ出てこねぇな」
「あ、確かに」
史人さん…あれからどうしているのだろう。
どこかでこっそり監視していたりするのかな?
考えていると、圭太が思い切ったように言った。
「なぁ、あの沼に行ってみないか?何か手掛かりが見つかるかもしれねぇし」
私は頷いた。
「そうだね。このまま何も起こらないのも不安だもんね」
「よーし、んじゃ早速…沼まで走るか!」
「ふぇっ!?ちょ、待ってよぉ!!」
元気に走り出した圭太を、私は笑いながら追いかけた。
夜の沼は、昼間以上に閑散としていた。
「こんなにも静かだと気味悪いなぁ…」
圭太が辺りを見渡しながら呟く。
「史人さん、いないのかな…」
と、その時、
「ははっ、わざわざ君たちから来てくれるなんてね」
はっとして振り向くと、そこには史人さんが立っていた。
「九頭竜!」
「史人さんっ!?」
「さぁ二人とも、そろそろ俺も退屈してきたから戦おうよ」
不敵な笑みを浮かべる史人さんを睨みながら、圭太が答えた。
「望むところだ」
それを聞いた史人さんの両目が赤く輝いた。
次の瞬間——
史人さんの身体が歪んだかと思うと、それは段々変形していき…
九つの頭を持つ竜に変化した。
驚き目を見開く私とは対照的に、圭太は微笑を浮かべていた。
「それが本来の姿だな!」
その声に我に帰り、私は圭太に指揮棒を向けた。
「発動!」
圭太の目も赤く染まる。
それを合図に、圭太と九頭竜は互いに飛びかかった。
「うおおおっ!!」
迫り来る九頭竜をよけ、圭太は刀を振りかざす。
九頭竜はそれをよけるも、圭太は素早く方向転換して、刀を突き付けた。
すごい!九頭竜に全く劣ってない!
感動しながら、私も攻撃する。
「風よ、我が命に従え——捕縛!」
動きを封じられた九頭竜を、圭太が次々と斬りつける!
圭太と九頭竜の力はほぼ同等だ。圭太にはその上私がついているため有利なのだ。
しかし、私達にも細かい傷が増えていく。
でも、このまま耐えてさらに攻撃すれば…!
と、その時だった。
「グオオオオオオオオオ!!!」
九頭竜が地響きが起こる程の咆哮を上げた。
「「うわあっ!?」」
私達は堪らずよろめいた。
その隙を見逃す相手ではなかった。
九つ頭の一体が、圭太の左腕に噛みついた。
「あ…う……!?」
鮮血が、飛び散る。
私には、圭太の声も、流れる血も、竜が腕から口を放すのも、
スローモーションのようにゆっくりと見えた…。
「けい…た……っ圭太!!」
胸の中に冷たいものが落ちてきたのを感じながら、私は圭太に駆け寄った。
圭太は虚ろな目で私を捉える。
「だ…大丈夫だ…このくらい…」
そう言うも、圭太はよろよろとしているし、絶えず出血している。
「一旦ひこう!」
私は震える声で言って、圭太を庇うようにして走り出した。
「なるほど、俺がオニのかくれんぼか。しばらくしたら探しに行くよ」
そんな言葉を背中越しに聞いて…。