コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.11 )
日時: 2013/11/30 17:15
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)

   【第四話】



 その言葉に、私達はしばらく何も言えなかった。
「よ…ようかい?」
 ようやく、凌輔が言葉を発した。

「いつも悪霊を目の当たりにしているあなたたちなら、妖怪の存在も信じられるかな?」
「いや、確かに悪霊は見ているけどさぁ…」
 圭太が複雑な顔をして言いかける。

 悪霊が存在するということは、私達祈祷師がいる時点で証明できる。
 まあ、悪霊のことも祈祷師のことも、一般人には極秘だけど。

 特に、よくテレビに出ている弱い霊能者はともかく、正真正銘の祈祷師は、
 持つ力が世間にバレたら一体どうなるのだろうか。

「けれども、悪霊と妖怪じゃ次元が違うよ」
 私が言うと、遥姉さんは「そうよね…」と返した。

「じゃあ、祈祷師と妖怪は何か関係があると思う?」
 うーん、と唸ってから、智晴が答えた。
「俺のイメージでは、物語でよく見かける妖怪と、俺達祈祷師が倒している悪霊って、
 確かに似ている気がするな」

「そうだね。妖怪も、守り神みたいなのもいるって聞くけど、
 人間に悪影響を与えるものがいそうだよね」
 旭も呟く。

 すると、純平さんが頷いて言った。
「旭の言う通りだよ。昔は守り神などのいい妖怪と悪い妖怪がいた。
 そして、悪い妖怪は祈祷師が退治していたんだ」

「「「「「ええ!?」」」」」
 私達は見事にハモっていた。

「そうだったのか!?でも今は…」
「ああ、でも五十年ほど前から妖怪は衰退していき、
 それから数年で守り神以外は姿を消したという」
「へぇ…」

 遥姉さんが続ける。
「どんな過程で悪霊が妖怪に変貌したかは不明なの。
 けど、その悪霊を倒さなければならないことに変わりはない。けれど浄化は効かない。
 だから、攻撃系のあなたたちに倒してもらうってこと」

 私は頷いた。
「そういうことね。質問だけど、何でそんな強い悪霊が白金町に出るの?」

 それには圭太が答えた。
「白金町は神社や祠が多く残っているからか、他の町より霊力が強いんだ。
 だから出るんだって親が言ってた」

「そうなんだ…」
 悪霊は主に霊力が強い場所に集まる。私が住むc県n市もそうなのだ。

「詳しくは以上よ。大まかなことは事前に聞いているよね」
「ありがと、遥さん、純平さん」
 智晴が二人に礼を言う。
 その様子を見て、私は疑問に思っていたことを口にした。

「そういえば皆さん知り合いなの?」
 圭太が頷いた。
「うん、二人とも元祈祷師だし、ジュンさんとリョウは親戚同士だからな」
「親戚なの!?」

 驚いて二人を見ると、純平さんが説明してくれた。
「ああ。凌輔は俺の十二歳年上の姉の子供…つまり甥なんだ」
「だから仲が良いんですね」

 すると、向かい側から反論の声が。
「ば、バカじゃねえの!?ちっとも仲良くねえから!」
 凌輔が身を乗り出していた。

「ご、ごめん!」
 思わず謝ると、凌輔がはっとしたように身を引いた。
「あっ…いや、その…」
 慌てた様子で口ごもる凌輔。

 これは…私がフォローすべきだよね。
「いいのいいの!気にしないで!」
「うぇ、そ、その………スマン」

 凌輔は顔を赤くして俯いた。
 あれ…今、謝った…よね?

 ぽかーんとしていると、智晴、圭太、旭がにこやかに言った。
「お〜?素直になれたじゃないか〜」
「よし、この調子だぜリョウ!」
「凌輔君頑張ってるね。僕も追い付かないと…!」「ううううるせぇ!あと子供扱いすんな!」

「…ふふっ」
 その様子を見ていたら、自然と声に出して笑っていた。
 本当に仲が良いんだなぁ、この四人。

 と思っていると、圭太が立ち上がった。
「よーし、説明も受けたことだし、サヨに町案内でもするか!」
「案内してくれるの?」
「当たり前だろっ!」

 圭太は満面の笑みを見せ、私の手を取った。
「てな訳で遥さん、サヨ借りるな」
「はいはい、気を付けてね〜」

「ちょ、ちょっと待って」
 私は足元に置いておいた竹刀入れとウエストポーチを手にとる。

「圭太ぁ、靴持ってってやるから置いていくなよー」
「ほら、凌輔君も行こ」
「別におれはいい…ってのわっ!?」

「行ってきまーす!」
 圭太に手を引っ張られ、私は外へ飛び出した。