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Re: 君と進む未来なら【圭太編 更新しました】 ( No.113 )
日時: 2013/12/29 20:00
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)

   【圭太編 第九話】



 私達は数分走った先にあった神社の本殿の裏側にたどり着いた。

 私は圭太を座らせ、竹刀ケースから持ち歩き用の包帯を取り出し、
 圭太の左腕に巻き付けて止血した。

 巻き終えて顔を上げると、圭太が微笑んだ。
「ありがと、サヨ」

 どきん、と高鳴る心臓。
 こんな状況であるにも関わらずドキドキしてしまう私って何なんだろう。

 胸に手を当てていると、圭太が尋ねた。
「サヨ、ここからそう遠くないところに、祈祷師が運営している病院があるのは
 知ってるな?」

 少し考え、すぐ思い出した。
 そう言えば、来たばかりの頃、圭太たちに案内してもらったな。

「うん」
「もしオレに万が一のことがあったらそこに逃げるんだ。
 あそこには強力な悪霊避けの結界が張ってあるから」

 それを聞いて、私は眉をひそめた。
「万が一って…圭太、もしかして命をかけるつもりなの!?」



「ああ。それがオレの目的だから」



 ——その力強い返事に、私はただ圧倒された。


 なんて強い意志を持っているのだろう。
 何でこんなにも惹かれるのだろう。


 私が目を見開いていると、圭太が再び尋ねた。
「サヨ、一つ訊いていいか?」

「え…うん」
 頷くと、圭太が顔を覗き込んだ。

「何でサヨは、こんなにオレのこと気遣ってくれるんだ?」

 炎のような赤目が、私の目をじっと見つめる。
 少し間を置いて、私は答えた。

「気遣っているんじゃないよ」

「え…?」
 予想外の返事だったのだろう、圭太は驚いた表情を見せた。
 私は彼を真っ直ぐ見つめ返して続ける。

「最初はそうだった。元気のない圭太が心配で竹藪に行ったの
 でも、九頭竜に選択を迫られたとき、圭太の意志を知って、その気持ちは変わった」

 思えばそうだ。はじめはただ気遣っていただけだった。
 でも、それからは…



「こんなにも真っ直ぐな人の…誰よりも強い意志を持つ圭太のそばにいたい。

 そして、あなたにこの身を捧げて尽くしたい…。

 そう思ったの」



 そう、それが私の答え。私の本音だ。

「…!!」
 圭太の目が見開かれた。

 ——心臓の高鳴りは止まらない。
 このまま突っ走れ、と言っているかのように。

 …今しかない。
 私は意を決した。


「圭太、私、あなたのことが——」


 その時だった。

「見ーつけた」
 恐ろしい声が響き渡った。