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- Re: 君と進む未来なら【圭太編】 ( No.117 )
- 日時: 2013/12/16 19:15
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: /qYuqRuj)
【圭太編 第十話】
はっとして立ち上がる。
すると、社の向こうから九頭竜が完全に姿を現した。
「ちっ、追い付かれたか…!」
圭太が刀を構える。
「もう逃げるのも休むのも無しだ。痛がらせてあげるよ!!」
言うなり襲いかかってくる九頭竜。
圭太はジャンプして回避する。
私も攻撃しようとした、その時だった。
「そんなこと…オレはともかく、サヨにはぜってぇさせねえ!」
「え…?」
圭太のその叫びに、私は思わず動きを止めた。
さっきよりも激しく動きながら、圭太は続ける。
「サヨはオレのことを、誰よりも意志が強いヤツって言ってくれた!」
九頭竜の背後に回り込み、ひたすら刀を突き付けまくる。
血の代わりに、黒い霧が飛び散った。
「尽くしたいとも言ってくれた!」
「い…ったい何が言いたいのかなああああ!?」
苦しげな声で九頭竜が叫ぶ。
「オレだってそうだ!この力は、サヨを狙う九頭竜を倒すために手に入れたんだ!
もっともっと強くなるために!!」
私は目を見開いた。
圭太は私のために、力を得ようと決めたってこと…!?
「そして、九頭竜を祈祷する以外にも、一つ目標ができた!
九頭竜を倒したら、サヨに——」
「くっっっっだらねえぇぇんだよおおおおおおおおお!!!!」
九頭竜は呻き声に近い絶叫を上げ、そして…
九つの全ての頭が、無防備だった私に襲いかかった。
そこではっと我に帰る。
しかし、もう遅い。
「あっ…ああ…っ」
情けない声を上げた私は、九頭竜に食いちぎられる
——はずだった。
だったのに。
圭太が私の前に立ち塞がり、九つ頭の一つの口に、自らの刀を投げ入れた。
九体の中心である真ん中の頭の、急所である喉へと。
刀を飲み込んだ一体は動きを止めたが、
それ以外の八体は、圭太の全身に噛みついた。
「っぐあああああああああああああ!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
目の前で圭太が、向こう側で九頭竜が絶叫した。
私は動けなかった。
ただ、目を見開いていた。
やがて、叫び続けた挙げ句、九頭竜は消滅した。
支えをなくした圭太が倒れる。
「け……圭太ぁぁぁぁ!!」
私は叫びながら、圭太にすがりついた。
全身を血で染めた圭太は、血のように赤い目をうっすらと開いている。
「圭太…!どうして…どうして…!」
そんな言葉しか出てこない私に、圭太が声を振り絞って言った。
「サ…ヨ……きいて…くれ…」
「圭太…?」
圭太は私を見つめ、いつものようににっこりと微笑み、そして…
「好きだ」
ただ一言、そう言った。
その言葉が、いとおしくて、いとおしくていとおしくていとおしくて
こんなにも嬉しいのに。
圭太は目を閉ざした。