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- Re: 君と進む未来なら【圭太編】 ( No.122 )
- 日時: 2013/12/17 23:59
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 0T24nVPU)
【圭太編 第十一話】
あの後、私は圭太を担ぎ、死に物狂いで祈祷師の病院へ走った。
祈祷師が怪我を負う時間帯は、悪霊が活発になる夜中が多い。
だから、その病院は午前三時という真夜中にも関わらず運営していた。
すぐに緊急治療が行われ、私は治療室の外で待機していた。
やがて治療を終えたお医者さんはこう言った。
「応急処置はしたが、まだ危険な状態だ。
彼には秘伝の良薬が必要だが、それを取ってくるのに三時間はかかってしまう。
もし彼に何かあったら連絡してくれ」
最後に「君も休んでいるんだよ」と言い残し、お医者さんは出ていった。
……そして今に至る。
私は病院の待合室で、ただ一人押し黙って座っていた。
お医者さんが薬を取りに行ってから二時間が経とうとしている。
私には、時間の経過がひどくゆっくりと感じられた。
私が想うことはただ一つ。
「圭太…」
掠れた声が漏れた。
お医者さんは、圭太の様子を見ていてほしいと言ったが、
私にはそれをする勇気がなかった。
目覚めない圭太を見ることで、さらに挫けてしまうと恐れているからだ。
…圭太。
あの時、圭太は私に向かって「好きだ」と言ってくれた。
その一言がこんなにも嬉しかったのに。
返事がしたいのに。
なのに、こんなことってあるの?
想いが実ったのに、圭太を失うことなんて。
そう思った瞬間、今まで堪えていた涙が、ついにボロボロと溢れだした。
「……圭太ぁ…」
椅子から滑り落ち、床にへたり込む。
圭太、圭太、
死なないでよぉ…。
「サヨ」
その声に、心臓が止まりそうになった。
信じられなくて、ゆっくりと振り返る。
治療室へ続く通路がある方へと。
そこには、身体のいたるところに包帯を巻き、ガウンを羽織る圭太がいた。
言葉が出ない私に、圭太は微笑んでもう一度呼んだ。
「サヨ」
「——圭太!!」
私は震える足に力を入れ、圭太のもとへ駆け出し
すぐそばまで来たところで抱きしめられた。
私も圭太の傷だらけの身体に腕をまわした。
途端に、安堵の涙が溢れ出す。
「けい…た…」
胸に顔をうずめて泣きじゃくる私の背を、圭太はそっと撫で下ろした。
「ごめんな…あんな光景を見せちまって…お前を不安にさせて。
ここまで連れて来てくれてありがとうな」
「うん…無事でよかった…!」
涙を拭い、私は顔を上げた。
圭太の…大好きな人の笑顔が目に飛び込んでくる。
「なぁサヨ、もう一回、ちゃんと告白させてくれ」
どくん、と高鳴る心臓。
「うん」
頷くと、圭太は大きく息を吸って、吐いて、そして…
わずかに頬を赤らめて言った。
「オレはお前のことが好きだ。だから、ずっとお前の側にいてもいいか?——沙依」
「……はい」
嬉し涙が頬を伝う。
私達は太陽が昇るまでずっと、互いの身体を抱きしめていた。