コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君と進む未来なら【圭太編 そろそろ完結】 ( No.125 )
- 日時: 2013/12/19 06:33
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【圭太編 第十二話】
八月二十七日。
あれからまだ二日しか経ってないというのに、
秘伝の良薬を使った圭太の傷は、ほぼ完治していた。
お医者さんの話によると、この薬は使用者の霊力が強いほど
効き目が良くなるらしい。
圭太は目覚めた直後からだんだんと霊力を回復させていったため、
薬もその効果を強めていったのだ。
——九頭竜の話をしよう。
九頭竜の弱点は、真ん中の竜の喉だった。
彼の力を得た圭太の頭の中には、そのことについてもインプットされていたという。
そして九頭竜を弱らせ、弱点に刀を投げてとどめを刺した。
高峰さんにその事実を報告すると、彼女は驚きながら、
今まで白金町を包んでいた悪霊の霊力が消えた、と教えてくれた。
つまり、九頭竜は完全に祈祷されたということだ。
旭、凌輔、智晴も一緒に報告を聞いていたが、
ほとんど圭太一人の手によって倒されたと知ったときは、
「すげー!」と驚きながらも「出番なくなった…」と少し落ち込んでいた。
圭太は「悪いな、ははは」と陽気に笑い、私も思わず吹き出していた。
また、力の主たる九頭竜が祈祷されたからか、圭太の悪霊の力は消え失せていた。
しかし高峰さん曰く「一度契約を結んだ者同士が
遠く離れて暮らすのは好ましくない」とのこと。
「じゃあ、私がこれからも白金町に…」
そう言いかけた私を、圭太が止めた。
「いや、オレがまいた種だからオレが責任をとるよ」
つまり、圭太が私の住む市に引っ越すということだ。
その日のうちに、圭太は私の自宅の近くにあるアパートの空室を取り押さえ、
そこで一人暮らしすることを決めた。
学校は私が通う高校への編入手続きを行っているらしい。
生活費は両親が毎月送ってくれるとのことだ。
「なんとか二学期が始まると同時に通えそうだってさ」
以上を伝えに二ノ宮家を訪れた圭太は嬉しそうに言った。
私は圭太を自室に招き入れ、彼の話を聞いていた。
「そうなんだ、よかったね」
おう、と頷くと、圭太はあたりをキョロキョロし始めた。
「誰も…見てないよな」
「うん、私の部屋だし、遥姉さん達は仕事に行ってるからね」
私がそう言うと、不意に圭太は俯いて黙ってしまった。
「ど、どうしたの?」
私、何か変なこと言ったっけ?
おろおろしていると、圭太が急に顔を上げた。
「さ、サヨ!あのな…」
顔を紅潮させながら、圭太は一気に言った。
「オレ、女子のこと好きになったの初めてだから色々よく分かんねえけど、
これからよろしくな!!」
いきなり言われたので少々きょとんとしていた私だが、
赤い顔をした圭太を見ているうちに、こちらの頬まで熱を帯びてきた。
「よろしくって、恋人としてってこと?……ひゃっ!?」
思ったことを言葉にしてしまい、ますます熱くなり目をそらす。
なにこれ…めっちゃ照れくさいよ…!
おずおずと再び圭太に目を向けると、彼はさらに赤くなっていたが、
その顔にだんだんと笑顔を浮かばせた。
「……ああ」
その返事を聞いて、私はもっともっと熱くなりながらも、自然と微笑んでいた。