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- Re: 君と進む未来なら【圭太編 そろそろ完結】 ( No.131 )
- 日時: 2013/12/20 23:15
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: j.vAWp8a)
【圭太編 最終話】
八月二十九日、木曜日。
今日、私はc県の自宅に戻り、日常へ帰還するのだ。
そう、新しく圭太が加わる日々へ。
今、私達は駅前にいる。
大きい荷物は配達してもらっているため、
私も圭太もさほど手荷物を持っていない。
しかし、お互い背中には竹刀ケースをしっかり背負っている。
圭太のケースの中にあるのは、彼の武器である刀だ。
九頭竜に放った刀は消滅してしまったが、
圭太は刀を大量に所持しているため問題なかった。
ただ、あの刀が一番の愛刀だったらしいけど。
圭太にはc県で、引き続き祈祷してもらうことになっている。
そのことが、私はとても嬉しかった。
「じゃあ、オレ達そろそろ行くな」
見送りに来てくれた旭、凌輔、智晴、それに遥姉さんに、圭太が言った。
「本当に駅前まで見送るのでいいのか?」
智晴が尋ねる。
「ああ、ちょっとサヨと行きたいところがあるんだ」
四人は頷くと、私達に手を振った。
「二人とも元気でね!」
「か、帰りたくなったら帰ってきてもいいんだからなっ!」
「無理すんなよー!」
「圭太くーん、サヨちゃんをよろしくねー!!」
「おー!今度戻ってくるからなー!」
「ばいばーい!!」
「んじゃサヨ、行こうぜ」
圭太はそう言うと、私の手首を掴んで駅の中へ入っていった。
「ねぇ圭太、行きたいところって?」
歩きながら尋ねる。すると…
「さ、サヨ、その…走るぞ!」
「え?うぇっ!?ちょ、ちょっと!!」
突如、圭太が走り出した。
圭太は駅ビルに入ると、出入り口のすぐそばにある階段を駆け登った。
引っ張られるがままに登り詰め、最上階に辿り着く。
そこは扉だけがある空間で、圭太はそれを勢いよく開けた。
扉の外は、駅ビルの屋上だった。
しかし、学校の屋上と同じでベンチも何もない。
「はあ、はあ…圭太が…行きたかったところって…ここ?」
ようやく止まった圭太に息を切らせながら尋ねるが、
圭太は何も言わずに俯いている。
疑問に思っているうちに呼吸が落ち着く。
圭太はそれを見計らっていたかのように、顔を上げて口を開いた。
「さ…サヨ!その…お…オレと……キ…」
言っているうちに、圭太の顔がみるみる赤くなっていく。
「き?」
私は首を傾げたが…
キ、から始まるもの。
赤くなっている圭太。
それらから連想されるものって、つまり……もしかして…!!
「……キス、してもいいか…?」
ぼふっ、と顔から火が出るのと同時に、圭太が言った。
これまでにないくらい速まる鼓動。
胸にぎゅっと手を押し当て——
「………いいよ」
私はようやく答えると、顔をわずかに上げて目を閉じた。
数秒後、頬に手が添えられる。
い…いよいよ、圭太の唇が、私の唇に……
「っだぁ———!!ダメだ!!や、やっぱ心の準備が足りねえや!!」
その声に、ぱっと目を開けると、圭太は真っ赤になりながら
「うが——!!」と叫んでいた。
私はしばらく茫然としていたが、
「…ふふっ」
頬を染めながら笑っていた。
この甘酸っぱい気持ちが愛しくて、心地よくて。
「ふふっ、あはははっ」
そんな私を見て、
「…ははっ」
圭太も笑った。
しばらく笑い合っていたが、不意に圭太が私の手をとった。
「まぁ、これからはずっとお前の側にいられるから、チャンスはいつでもあるよな」
やんちゃな少年のようにニッと笑う圭太。
「うん、楽しみにしているね」
私も負けじと微笑む。
「…じゃ、そろそろ行くか!」
「うんっ!」
取り合った手を繋ぎ、私達は一歩踏み出した。
圭太と私、二人で進む、新たな日常へと。
————————Fin