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Re: 君と進む未来なら【旭編】 ( No.142 )
日時: 2013/12/23 17:53
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: B6N9vk9k)

   【旭編 第一話】



 私が一番気になるのは…
 内気で繊細、しかしながら気配りのできる——

 旭。

「…よし」
 私は立ち上がり、部屋を出た。


 遥姉さんに言い訳をして、私は旭の自宅へ向かった。
 旭がいそうな場所といえば、そこしか思い浮かばなかったのだ。

 十分くらい走り、ようやく時和家のに近づいてきた。
 ここまでずっと走ってきたうえ、八月の茹だるような暑さで、
 私は汗だくだった。

「もー…すこ…しっ……!」
 と、その時だった。

 突然、旭の従弟である和馬君が、角から現れた。

「わわわわわっ!?」
 危うくぶつかりそうになったが、ギリギリのところで止まった。

「わぁ、沙依さんじゃん!どうしたの?」
 和馬君が驚いた表情をして尋ねる。

 私は息を落ち着かせてから答えた。
「ふう…えっとね、旭に会いたいんだけど…」

 すると、和馬君が言った。
「旭兄ちゃんなら、今うちにいるよ。ばあちゃんに用があるみたいだから」

 和馬君の家、和馬君のお祖母ちゃん…
 つまり、旭は高峰家にいるってことだ。

「そうなんだ、ありがとう!和馬君、これから帰るところ?」
「ううん、これから部活なんだ」
 よく見ると、和馬君は中学のジャージを着てテニスラケットを持っていた。

「そっか、頑張ってね!じゃあまた!」
 和馬君に手を振り、私は高峰家に向かって再び走り出し…

「あ、沙依さん!うちに行くならバス使ったほうがいいよ!
 そろそろここらへん巡回する頃だから!」
「…そだね」

 確かに、この気温で走って行くには無理があった。

 - - - - - - -


 冷房のきいたバスから降り、すぐ目の前にある高峰家の敷地内に入る。

「やっぱ広いなぁ…お庭もお家も」
 そう独り言を呟いてしまうほど、高峰家は広い。

 玄関に辿り着き、チャイムを鳴らそうと指を伸ばす。
 すると…

「…待たせてしまいすみませんね、旭さん」
「いえ、お気になさらずに」

 高峰さんと旭の声が、縁側から聞こえた。

 指を引っ込め、思わず耳を澄ます。

「体調面でおかしなことはありませんか?」
「はい、良好です」

 玄関は東、縁側は南にあるため、向こうからこっちの姿は見えないだろう。
 何だか盗み聞きしている気分だが、
 話をしていることを知りながらチャイムを鳴らすのは気が引ける。

「そうですか。では、強大悪霊の訪れとは関係ないようですね」
「おそらく」

 …ところで、何の話をしているのだろう。
 強大悪霊って九頭竜のことだよね?何が九頭竜と関係がないんだろう。
 私は首を傾げた。

 しかし、次の言葉に、私は衝撃を受けることになる。


「不調だったらすぐに言うのですよ。



 あなたにかけられた"呪い"は、清めの力が消えた途端に猛威をふるうのですから」



 ——え?