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- Re: 君と進む未来なら【旭編】 ( No.145 )
- 日時: 2013/12/24 23:20
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 4n3MlAWB)
【旭編 第二話】
旭にかけられた"呪い"?
清めの力が消えると猛威をふるう?
それって…それって…!
「それってどういうことですかっ!?」
私は縁側へ飛び出して叫んでいた。
「さ…沙依ちゃん!?」
縁側に面した部屋で向かい合っている旭と高峰さんが目を見開く。
私は縁側に両手をついて身を乗り出した。
「旭!ねぇ、どういうことなの!?旭にかけられた呪いって…!」
旭がさらに驚愕する。
「沙依ちゃん…もしかしてさっきの話…!」
そこでようやく、私は我に帰り冷静を取り戻した。
「ごめん…旭のことが気になってここに来たら二人の声が聞こえて…」
理由にならない理由をうつむきながら呟く。
すると、今まで黙っていた高峰さんが口を開いた。
「旭さん、沙依さんに全てお話しなさい。あなたの呪いについて、全てを」
「お祖母様…?」
旭が驚いた表情で高峰さんを見る。
私も目を見開いた。
高峰さんがそう言うとは思いもしなかった。
旭はしばらく目を伏せて黙っていたが…
やがて決心したように顔を上げた。
「沙依ちゃん、今からお清めに行くんだけど、着いてきてくれないかな。
向かいながら、君に話すよ」
私は頷いた。
「…うん、もちろん行くよ」
- - - - - - -
二人で高峰家を出て歩く。
旭曰く、「お清め」はここから徒歩二十分のところにある
風祭神社という神社で行われるとのこと。
そして、そのお清めは、旭の"呪い"に関わる儀式らしい。
歩き始めてすぐに、旭は話してくれた。
「前、僕には悪霊に殺された兄がいるって話をしたよね」
私は頷いた。祈祷師の女性が悪霊に殺されたと知った時、
旭が話してくれたのだ。
「実は、あの話には続きがあるんだ」
「続き…?」
うん、と旭が頷く。
「兄さんが悪霊に矢を刺す直前、ほんの一瞬だけ、悪霊が僕を見たんだ。
直後、兄さんと悪霊は相打ちになって倒れた。
——その時だった」
不意に旭が立ち止まる。
そして、怯えたような表情を浮かべて言った。
「僕の身体中に悪寒が走った。そして、声が聞こえたんだ」
旭は苦しげに、その言葉を紡いだ。
「『呪ってやる』って…」
私が言われた訳ではないけれど、恐ろしくて鳥肌が立った。
「その後、お祖母様たちに調べてもらった結果、
僕に呪いがかけられていることが判明した」
訊きづらかったが、知らなければいけないことなので尋ねた。
「その呪いは、どんな影響を及ぼすの?」
旭が答える。
「生命力を奪う呪いさ」
「——!」
私は目を見開いた。
それって、いずれ死に繋がるってことだ…!
「だけど、毎月お清めをすれば、呪いを抑えることができるんだ。
このお清めは、風祭神社を守る神様の力が必要となる。
だから、僕はお清めの仕方を教わって、毎月風祭神社に通っているんだ」
「じゃあ、そのことも旭が白金町に引っ越してきた理由なんだね」
「うん」
旭は頷いてから、自分が身に付けている青いヘアピンを指差した。
「このヘアピンにも、清めの力がこめてあるんだ」
そういえば旭がヘアピンをしていない姿は見たことがなかった。
「…今話したことが、僕の呪いの全てだよ」
そう言い、旭は寂しげに微笑んだ。
——その儚い表情が、私の心を動かした。