コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 君と進む未来なら【旭編】 ( No.147 )
日時: 2013/12/26 23:19
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: /qYuqRuj)

   【旭編 第三話】



 私は静かな声で尋ねる。
「じゃあ、この前旭が私のことを避けていたのって…」
 すると、旭は決まり悪そうに目を反らして答えた。

「う、うん…。沙依ちゃんが九頭竜から受けた仮契約も
 "呪い"みたいなものかも、って思ったら、少し怖くなって…」

 …ああ、やっぱりそうだったんだ。
 私はゆっくり口を開き——

 叫んだ。


「馬鹿!」


「うぇっ!?」
 旭が目を白黒させる。
 私はお構い無しに続けた。

「馬鹿ばかバカぁー!旭のばかー!!」
 しまいには旭の胸をドンドンと叩き始めた。

「さ、沙依ちゃん!?とりあえず落ち着…げほごほっ!」
「落ち着けないよ!だって、だって…!!」
 私はそこで手を止めて呟いた。

「てっきり旭に嫌われたって思っていたんだもん…」

 そう、私の心を動かしたのは、
 旭が私を避けていた理由を確認したい気持ちだった。

 人のいい旭が避ける対象なんて嫌っている人ぐらいだよなーって
 思い込んで悩んでいたのだ。
 旭のもとへ行くにあたって、その悩みは一時的に忘れていたのだけれど。

 上目遣いで旭を睨み、頬を膨らませる。
 しばらく呆然としていた旭だったが、やがておろおろし始めた。

「ぼぼぼ僕、沙依ちゃんにそう思わせていたの!?ごっごめん!ごめんなさい!」
 頭を何回も下げる旭。

 私もようやく我に帰った。
「あ、いいのいいの!私こそ罵声を浴びせてごめん!」

 すると、旭はようやく頭を下げるのをやめて、
「本当にごめんね、沙依ちゃん」
 ほんわり、と擬音語が付きそうに笑顔を浮かべた。

 その頬がわずかに赤くなっているのは照れているからかな。
 それにしても、旭の笑顔って癒されるなぁ。

 …そんなことを考えている私も、少しだけ顔が火照っていることに気が付いた。
 あれ?何でだろう。

 そう疑問に思っていると、旭が言った。

「僕、沙依ちゃんって落ち着いている子だなぁって思っていたけど、
 女の子らしい一面も見せてくれるんだね」

 聞いた直後はきょとんとしていた私だが、
 だんだんその言葉の意味が分かってきた。

「…それって、私のこと女の子らしくないって思っていたってこと…?」
 再び拳を握りながら尋ねると、旭は慌てて言い直した。

「ち、違うよ!そういう意味じゃないよ!
 今までは沙依ちゃんの性格に惹かれていたけど、今は可愛いって思って
 より一層……っっ!」

 そこで止めると、旭はさらに赤くなって手をバタバタ振った。

「ん?ごめん、旭さっき早口だったからよく聞こえなかったよ。もう一回…」
「よ、よーし!そろそろ行こうか!」
 旭は私の言葉を遮り、すたすたと歩き始めた。

「ちょ、待ってよー!」
 慌てて追いかける。

 んで、結局何て言ったんだろう?
 私は首を傾げながらも、何だか楽しくて笑った。