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Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.15 )
日時: 2013/07/30 18:12
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)

   【第六話】



 四人が目を見開いた。
「マジかよ!?」
「ぼ、僕はまだ感じないけど…」
「私の一族はもともと霊感が強いみたいだから。…取り敢えず、早く見つけないと」
 私は気配がする方へ走り出した。四人も後に続く。

 移動しながら、圭太が言った。
「オレさっき、湖のことについて言いかけただろ。あの続きなんだけど…ここ、悪霊が出やすいんだ」
「そうなんだ…。道理で霊力が強いと思った」

 進んでいくうちに、気配はどんどん強くなっていく。
「おれももう感じるぜ」
「ああ。おそらくすぐそこに…」
 智晴が言い終わらないうちに、その姿が見えた。

 湖の上に漂う、黒い塊。
 悪霊は、だいたいこんな姿をしている。

「…なんだ。結構雑魚じゃん」
「沙依ちゃん、そんなことまで分かるの!?」
「まあね。…ところで四人とも、武器は?」
 私が訊くと、凌輔以外の三人がギクッと効果音がつきそうな表情になった。

「あぁ、え〜っと、その…凌輔君は用意できるんだけど…その…」
 旭の言葉を遮って、圭太がバタバタと両手を動かした。
「ごっごめん!今はサヨとリョウで払ってくれ!後で説明するから!」
「わ、分かった」

 私は小首を傾げたが、四人とも財布くらいしか持っていないため、武器があるわけないよな…とは思っていた。
 だけど、何で凌輔は用意出来るのだろうか。確か凌輔の武器は槍のはずだけど…。
 そう考えながら凌輔を見ていたその時、

「しゃーねえなぁ。まあ、任せとけ…よっ!」
 凌輔が右腕を横に薙ぎ払った。
 次の瞬間、凌輔の右手に一本の槍——緑色の布が巻かれた柄に、十文字の刃が輝く長い槍が現れた。

「えええええ!?」
 ど、どういうこと!?マジック!?
 呆然としている私に、凌輔が得意そうに言った。
「これがおれの特殊能力である空間転移さ」
 その言葉で思い出した。

 攻撃系祈祷師は、私のように「術」を使い祈祷する者と、「武器」を用いて祈祷する者に分けられる。
 そして武器使いは、何らかの能力…特殊能力を持っているのだ。稀に持っていない祈祷師もいるらしいけど。

 便利な能力だなぁ…と思っていたが、凌輔の声で我に帰った。
「湖の上か…槍じゃ攻撃しづらいな」
 私は急いで竹刀入れから指揮棒を取り出した。
「逆に私にとってはラッキーだけどね」

 指揮棒を珍しそうに見ている凌輔に言った。
「じゃ、率先して攻撃するから!」
「ぬ、抜け駆けすんなよ!」

 軽く頷いて、私は指揮棒の先端を湖に向けた。
「水よ、我が命に従え!」
 短く唱え、今度は指揮棒を悪霊に向ける。
「斬撃!」
 すると、帯状の刃となった湖の水が、悪霊に向かって跳ね上がった。しかし、悠々とかわされる。

 私は続けて水刃を放つ。
 連続攻撃は得意技だ。悪霊の身体に次々と命中した。
 攻撃しているうちに、悪霊は陸の上に移動していた。

 私は凌輔を振り向いて言った。
「これで攻撃できるでしょ!」
「へえ…お前、やるじゃん!」

 凌輔はニヤリと笑い、槍を構えた。
「たあああっ!」
 銀色に光る刃が悪霊を射抜く。
 すでに弱まっていた悪霊は、その一撃で消滅した。