コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.17 )
- 日時: 2013/11/30 17:19
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第八話】
月曜日の朝。
「あと少し…あと少し…」
そんなことを呟きながら、布団に顔を埋めていた時だった。
「おーい」
すぐ近くで声が聞こえた。
「——ぅん…?遥姉さん…?」
でも、遥姉さんにしては声が低すぎではないか…?とうつらうつら考え始めたが、
「ははっ、寝ぼけてんだな。圭太だぞ〜」
「あぁそう……ってえええええええええ!!??」
私は完全に目が覚め、がばっと跳び起きた。
するとすぐ横に圭太が立っているのが見えた。
「おはよー、サヨ!」
「けっけけけけけけ圭太ぁ!?」
自分でも顔が真っ赤になっていることが分かった。
だって寝顔見られたし、髪ボサボサだし、パジャマ姿だし!
「なっ何で圭太がいるのおおおぉぉぉ!?」
ここは居候させてもらっている二ノ宮家の二階にある空き部屋のはずだ。
そして私は居候中、この部屋を自室として使うことができるのだ。
「昨日、オレん家が一番ジュンさん家と近いから、
サヨを学校まで連れていくって約束しただろ?」
「時間が早いよ!だってまだ六時七分だよ!?」
「え?あー、ごめん!オレいつも五時起きだから早まっちまった!」
「早まりすぎだよ!?約束の時間は七時半だったよね!?」
「悪ぃ悪ぃ!まあ、早くサヨに会いたかったってこともあるんだけどなー」
「うぇっ!!」
圭太のその言葉に、私はドキッとした。
「…ん?どーした?」
しかし、圭太はいつも通りの様子だ。
もしかしたら、圭太は異性についてあまり意識しないタイプなのかな?
「…で、でも、来てくれてありがと」
とりあえず気を取り直した。
「おう!じゃあ、準備し終わるまで待ってるからな」
そう言い残し、圭太は部屋を後にした。
改めて気付いたが、圭太はワイシャツに赤いネクタイ、紺色のズボンという制服姿だった。
…学校に行くのだから当たり前か。
私も制服に着替える。ちなみに白金高の女子制服は、私の高校と同じくセーラー服だそうだ。
髪は洗面所で整えよう。私は黒のハイソックスを履き、部屋から出た。
それから急いで髪を縛り、朝食を食べて、玄関を出た。
「おまたせー」
「はいよー。じゃ、行こっか」
そこで待っていた圭太は、通学用のショルダーバッグの他に、竹刀ケースを持っていた。
「もしかしてそれ、武器?」
圭太が頷く。
「ああ。サヨに見習って、オレも持ち歩いていようかなーって」
「私もその方がいいと思うよ」
二人で歩き出す。
二ノ宮家から歩いて五分のところに住んでいる圭太は、いつも徒歩で通学しているらしい。
「他の三人はどこら辺に住んでるの?」
「アサは学校のそば、リョウとトモはオレん家より北の方だよ。
今度案内しないとなー」
「ありがとう」
会話を絶やすことなく歩いていたその時——
「…!」
悪霊の気配がした。それも強めの。
「これは…」
圭太も気付いたらしい。
「行こう、近くにいるぞ」
「うん!」
私達は走り出した。
圭太が携帯から電話をかける。
「トモ、今サヨといるんだけど、強い気配を感じたんだ。…ああ、通学路で。
…うん、アサは学校と逆方向だからリョウに伝えといてくれ。じゃ」
電話を切ると同時に、人型の悪霊を見つけた。
運のいいことに、周りに一般人はいない。
それぞれ竹刀ケースから武器を取り出す。
圭太は赤茶色の鞘から刀を抜き、身構えた。
「オレが先に切りかかる。サヨは隙を見て攻撃してくれ。
…行くぞ!」
「うん!」
圭太が悪霊に飛びかかった。
「はぁっ!」
閃光のような速さに回避できず、悪霊から血のごとく黒い靄が飛び散る。
反撃しようと襲い掛かる悪霊に、私は指揮棒を向けた。
「風よ、我が命に従え!——斬撃っ!」
風の刃が唸りをあげる。
よろめく悪霊にすかさず圭太が食らいつく。
「大人しく——しろよっ!」
そして、連続で切りかかった。
刀を使っている様子なんてドラマでしか見ないけどわかる。
——速い。そして、瞬発力や跳躍力なども優れている。
圭太は運動神経がいい。一昨日聞いたその言葉に、十分納得できる。
感心している間に、悪霊はだいぶ弱っていた。
私は足元に生える雑草に指揮棒を向ける。
「草花よ、我が命に従え!——捕縛!」
一斉に伸びた雑草が、悪霊を捕らえた。
「うりゃああああ!」
銀色の刃が悪霊を突き刺す。
しばらく悶えた後、悪霊は消滅した。
「ふ〜、朝から汗かかせやがって…」
圭太は刀を鞘に収め、流れる汗を拭った。
私も竹刀ケースに指揮棒をしまいながら、ある疑問を抱えていた。
なぜ、朝昼に弱い悪霊が、今も一昨日もその時間に現れたのだろうか?