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- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.18 )
- 日時: 2013/11/30 17:23
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第九話】
「圭太!沙依!」
声がした方を振り向くと、智晴と凌輔が走ってくるのが見えた。
「はぁ、はぁ…悪霊は?」
「今払ったところだ」
「そっか…遅れて悪いな」
私は思い切って、考えていたことを言ってみた。
「ねえ、疑問に思ったんだけどさ…」
「ん?どうした?」
「悪霊って、朝昼はほとんど出てこないのに、なんで一昨日も今日も…」
すると三人とも、はっとした表情になった。
「確かに…こんなこと滅多にないよな…?」
うーむ、と圭太が考え込む。
「…俺の予想なんだけどさ」
智晴が口を開いた。
「強力な悪霊が現れる余興かもしれないと思うんだ」
「余興?」
凌輔が首をかしげる。
「ああ。つまり、霊力が強くなり始めているってことだよ」
「…なるほどね」
智晴の言うことには充分納得できる。
「考えていても仕方がないことだし、取り敢えず学校に行こうぜ」
「そうだな…」
凌輔の言葉で、私達は歩き出した。
まだ早いためか、登校している生徒は数えるほどしかいなかった。
白金高の門を入ってすぐに、旭が駆け寄ってきた。
「旭、おはよう」
「あ、一緒だったんだ。おはよー」
「すぐに駆け寄ってくるとか可愛いぞアサ!」
「えええ!?か、可愛い!?」
おどおどし始めた旭だったが、気を取り直すと私に言った。
「えっと、確か今日は職員室に行くんだよね。
昨日行ったと思うけど、僕が案内するよ」
「ありがと。まだよく場所が分かんないんだよね」
守ってあげたくなる性格の旭だが、今は頼もしく思えた。
私と旭は三人と別れ、歩き出した。
「あのね旭、実は今朝…」
智晴から頼まれていたため、私はさっきのことについて話した。
「こんな朝から悪霊が出たんだ…確かに一昨日もおかしいなーって思ったんだよね」
旭はうんうんと頷いた後、思い出したように言った。
「そうだ!今日の午後、僕の親戚の祈祷師さんが、
強力な悪霊について詳しいことが分かったから話がしたいって」
「え、ホントに!?てか、旭の親戚?」
旭が頷く。
「うん。僕の従兄弟のおばあさんで、浄化系の祈祷師なんだ。
悪霊についてすごく詳しいんだよ」
つまり偉大な祈祷師なのだろう。ちなみに課外は午前中のみだ。
「そっか。会うのが楽しみだなぁ」
話しているうちに、職員室に着いた。
そして始業前になり、私は緊張しながら二年一組の教壇に立っていた。
白金高の課外は全員参加らしく、目の前には四十人ほどの生徒が着席している。
担任の早川先生(三十歳男性・独身)が紹介してくれた。
「えー、これから夏休み中共に学ぶことになる町田沙依ちゃんだ。
美少女だからって手ぇ出すんじゃねーぞ!」
…って紹介がそれかよ!
「えーっと、町田沙依です。少しの間ですが、よろしくお願いします!」
頭を下げ、恐る恐るクラスメイトの反応を見る。すると…
「きゃー!美少女!」
いきなり抱きつかれた。
「うえ!?な、何!?」
私を抱きしめているのは女子だ。
じゃあこの子は、確かクラスで一人の…
「あ、申し遅れたわね。あたしは要由奈!
このクラスの学級委員で唯一の女子よ。仲良くしてね、沙依!」
女子…由奈はにっこりと笑って言った。
「あ…うん!よろしく!」
すると男子陣から声が上がった。
「おいおい要ぇ、一人抜けすんなよ〜?」
「てか美少女マニアっての、本当だったんだな」
「俺だって町田ちゃんとは仲良くしたいな」
声がした方を見ると、そこには中の良さそうな坊主頭の三人組がいた。
「うるさいわよ三馬鹿!あんたたちは大人しくしてなさい」
由奈がキッと睨むと、三人は「怖え怖え」と言いながら静かになった。
…強いな、この子!
「あいつらは左から順に、山田、前原、西野よ。
三人とも野球部で、通称三馬鹿よ。まあ、仲良くしてやって」
「野球部なんだ。よろしくね」
三人に向かって言うと、「うっす!」と元気のいい返事が返ってきた。
「そういえば、時和と一緒にいたところを見たけど、あなたたち知り合いなの?」
由奈が訊ねると旭が答えた。
「うん、親が知り合い同士なんだ」
それは旭が考えてくれた言い訳だろう。
すると旭の隣席の男子がからかうように言った。
「おお〜、旭もついに彼女ゲットかぁ〜」
「えぇっ!?矢内君、か、彼女じゃないよ!」
旭は顔を赤くして返した。
「今はそうじゃなくても、その内なれるって!頑張れ時和!」
後ろの席の男子も続けて言った。
「高橋君!?そっ、そんなぁ…!」
なんだか微笑ましい姿だ。旭の様子を見て、
クラスメイトも和やかな表情をしていた。
きっと旭は、四人の中でもクラスでもいじられキャラなのだろう。
「分からないことがあったら何でも聞いてね!力になるから!」
「ありがとう」
由奈がウィンクして言った。