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- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.19 )
- 日時: 2013/11/23 20:15
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第十話】
課外が終わった午後、昼食を済ませた私達は、旭の親戚のおばあさんの家に向かっていた。
「やっぱりバス使ったほうがよかったな…。大丈夫か?」
智晴が心配そうに声をかける。
炎天下の中、もう四十分は上り坂を歩いただろう。そのため、私は汗だくになり息切れしていた。
「ううん…大丈夫…」
そう返事はしたが、何だか身体の調子がおかしいように思う。
「サヨ、顔色悪いぞ?」
「す、少し休む?」
圭太と旭も顔を覗きこむ中、
「これくらいでへばってどうすんだよ。お前本当に攻撃系か?」
凌輔が冷たく言い放った。
「ったく…そんなんでおれ達に協力出来んのかよ」
「…っ」
その言葉が胸に突き刺さった直後、
「おい凌輔…いい加減にしろよ」
智晴が、今まで聞いたことがないくらい冷たい声音で言った。
「な、何だよ、トモ」
「何だよじゃねえよ。今の言葉で沙依がどれだけ傷ついたと思ってんだよ」
「そ…そんなの知るかっ!」
「何だと…!?」
今にも喧嘩を初めようとしている二人を、圭太と旭が宥めた。
「お前ら落ち着け!サヨの前で厄介な事すんなよ!」
「そうだよ、それより早くおばあさん家に行って沙依ちゃんを休ませ…沙依ちゃん!?」
急に意識が朦朧として、私は倒れてしまった。
「沙依!」
智晴の声を最後に、意識を手放した。
‐‐‐‐
『沙依ちゃん、独りでおつかい行ってくれるのかい?』
『もう、おばあちゃんってばぁ。沙依、もう七さいなんだよ!わがし屋さんの場所くらいわかるよぉ』
『おお、そうかい。そうだねぇ…車通りも少ないし近いから…じゃあ、沙依ちゃんに任せるよ』
『はーい!いってきまーす!』
『川に落ちないように気を付けるんだよ』
‐‐‐‐
「う…」
ゆっくりと瞼を開くと、圭太、凌輔、智晴の顔が映った。
「サヨ!気が付いた!」
「ああ、無事でよかった…!」
ここは室内で、布団に寝かされていることに気付き、私は身体を起こした。とたんに猛烈な喉の渇きを覚えた。
すると、凌輔がコップに入ったスポーツドリンクを差し出した。
「飲めるか?」
「うん…ありがとう」
ゆっくりと飲み干し、私はようやく尋ねた。
「ここは…?」
「おばあさんの家だ。あそこからすぐそこだったから、お前を運んできたんだよ」
「あっ…そうだ、私…」
確か、行く途中で倒れたんだ。
「軽い熱中症だってさ。それより…もう大丈夫か?」
「うん。少しだるいけど、特に何ともないよ」
「そうか…本当によかった…」
智晴がほっと息を吐いた。
…そういえば、さっき見ていた夢は確か…小さいころの記憶だった気がする。
でもなんでそんな夢を見たんだろう。そう考えていると、二杯目のスポーツドリンクを差し出しながら、凌輔が言った。
「さっ、サヨリ…さっきはその…」
例の如く、顔を赤く染めている。
「…流石に言い過ぎた。す…すまない」
そして、がばっと頭を下げた。
私が返事をする前に、凌輔は智晴の方を向いた。
「トモもすまなかった。怒られて当然なのに逆ギレしちまって…悪かった」
「俺の方こそ、取り乱してごめん。暑かったからイライラしていたみたいだ」
二人も仲直りしたようだ。よかった。
「サヨも無事だったし、一件落着だな!オレ、旭とおばあさん呼んでくるわ」
明るく言い部屋を出ていく圭太。その姿を見送りながら、凌輔が言った。
「そういえば、トモがサヨリをここまで運んで来たんだぜ」
「そうだったんだ…って、お、重くなかった!?」
私は慌てて訊いた。ヤバい、体重バレた…!?
「いや、そんなの感じてる暇はなかったな。早く沙依を助けることで頭がいっぱいだったからさ」
そう言って、智晴は笑顔を見せた。
——その笑顔に見覚えがある気がしたのは気のせいだろうか。