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Re: 君と進む未来なら【旭編】 ( No.194 )
日時: 2014/01/17 23:32
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: bHw0a2RH)

   【旭編 最終話】



 夜が明け、太陽が昇り、朝がやって来た。
 ——そう、人々が私達のことを忘れ去った朝が。

 解呪が終わったのは、まだ真夜中だった。
 さすがにこの時間に行動をとるのは気が引けたため、
 私達は夜が明けるまで、沼の畔で寄り添って仮眠をとっていたのだ。

 まだ少し眠い私に、旭が伸びをしながら言った。
「そろそろ行こうか」
「うん、そうだね」

 すると旭は、目を擦りながら返事をした私の顔を覗きこんだ。
「あはは、まだ眠い?でも、電車の中でいっぱい眠っていいからね」
「あ、あう…。うん、そうしよ…」
 思わず照れ笑いを浮かべると、旭も同じように笑った。

 それぞれ荷物を手にとる。
 この場に持ってきておいた武器や携帯は、
 すぐ近くにあったからか、消滅していなかった。

 でも、これら以外の物はもう全部…

 一気に気持ちが沈んだその時、
「沙依ちゃん」
 旭が私の名前を呼んだ。

「なあに?」
 振り向いて、旭と向き合う。すると——


 旭はニコッと微笑むと、不意にヘアピンを髪から外した。

 そして私に歩み寄ると、そのヘアピンを、私の髪に付けた。


「え…?」
 驚く私に、旭は微笑みながら言った。



「誓いのしるし。君を幸せにするよ——沙依」



「——!」

 その言葉に、その表情に、これまでにないくらいの嬉しさが弾けた。


 私はツインテールをほどき、髪を縛っていた二つの黒いヘアゴムを
 旭の手首に通した。

 ヘアゴム越しに旭の手首をぎゅっと握る。



「私も、旭を幸せにする。ずっとずっと旭の側にいるって、約束します」



「——うん」
 そして、抱きしめ合った。



 そうだ、何も怖いことはない。

 もう全ての人が、私達のことを忘れてしまったのだろう。
 まだ寂しさは消えていないけど…


 …でも、大丈夫。

 だって、私には旭がいるから。



 私と旭、二人で歩んでいく未来なら——不安なんて、ない。



 少しだけ身体を離し、顔を見合わせ微笑み合い、私達は唇を重ねた。



 ——大好きだよ、旭。


 この先、何が待ち受けていても…一緒に乗り越えていこうね。



        ——————————Fin