コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君と進む未来なら【凌輔編】 ( No.206 )
- 日時: 2014/01/25 10:38
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 8keOW9sU)
【凌輔編 第四話】
「さっき智晴から『凌輔が無茶している』と聞いて駆け付けたんだが…
どうやら遅かったようだな…」
私は信じられなかった。
凌輔や純平さんが悪霊の力を秘めていたなんて思いもしなかったし、
過去に悪霊と結ばれた女祈祷師がいるということも初耳だ。
ふと凌輔を見ると、彼は顔を青白くしていた。
「そうだった…忘れてたよ…。もうおれは…おれは…」
虚ろな声を出す凌輔。
…と、その時だった。
「——凌輔」
不意に、凛とした女性の声が響いた。
振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
二人が声を上げる。
「お袋…!」
「姉貴!」
どうやらこの人は、凌輔のお母さんであり純平さんのお姉さんであるようだ。
ということは、純平さんは凌輔の母方の叔父なんだ。
そう納得している私をよそに、凌輔のお母さんは厳しい口調で言った。
「凌輔…禁忌を破ったわね」
「——っ!」
たじろぐ凌輔に、お母さんは容赦なく告げた。
「これから親族会議を行う。そこであんたに罰を下すわ。来なさい」
すると、純平さんが凌輔の前に立ち塞がって言った。
「待て、姉貴!凌輔はまだ高校生だぞ!?しかも故意に破ったんじゃない!」
しかし、お母さんは純平さんを睨み付けた。
「純平、何も関係のないあんたが口出すんじゃないわよ。
一応、着いてきてもらうけど」
そして今度は私を見て、すこし表情を緩めて言った。
「あなたは…町田沙依さんね。あなたも着いてきてもらうわ」
そこから発せられる威圧感に何も反論できないまま、私はこくりと頷いた。
凌輔の自宅…南家の地下にある大広間に、親族達が集まったところで、
親族会議が始まった。
部外者は私ただ一人だ。
凌輔のお母さんが、よく響く声で告げる。
「今日午後二時半、南家の家宝である水晶が緑色に変化——
つまり、南家の人間が禁忌を破りました。それは南凌輔でした」
輪になって座る親族と私の中心に立つ凌輔に、絶えず視線が浴びせられる。
「どうやら町田沙依さんを庇って力を使いすぎたようですが、
禁忌を破ったことに変わりはありません」
私は今度こそ反論しようと思ったが、遮るようにお母さんが言った。
「なので、従来の罰を下します」
親族の一人が口を開いた。
「じゃあ、『追放』するということですよね?」
その言葉の意味を理解する前に、お母さんが言った。
「はい。南凌輔に、白金町永久追放と縁切りの罰を下します」
永久追放!?
しかも…縁切り!?
それって、凌輔は南家の人間ではなくするってこと…!?
私は立ち上がって叫んだ。
「待ってください!凌輔は私を庇って、力を使いすぎてしまったんです!
だから全ての原因は私にあります!だから私が罰を——」
すると、お母さんの冷たい声が遮った。
「沙依さん、お黙りなさい。
凌輔を庇っても無駄です。たとえ誰かに原因があっても、
禁忌を犯したことに変わりはないのですから」
私がさらに反論しようとしたその時、凌輔が口を開いた。
「——分かった。罰に従う。…でも条件がある」
条件?
凌輔は罰を下した自分の母親を見据えて言った。
「一つ、九頭竜を倒してから出ていく。
二つ、許されていないことだが——追放の際、沙依を連れていく」