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- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.21 )
- 日時: 2013/11/23 20:22
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第十二話】
水曜日の夕方。
遥姉さんに頼まれて買い物をしてきた私は、いつも人通りの少ない道を歩いていた。
「醤油に洗剤、雑巾…よし、全部あるね」
袋の中を確認していた時だった。
「——っ、またか…!」
悪霊の気配を感じた。実は買い物に向かう時も遭遇したのだ。
急ぎ足で気配がする方に移動する。するとそこには…
「ったく、また出てきやがった…!」
「やっぱり増えたよね…」
それぞれの武器を持ち、人型の悪霊を前にする旭と智晴がいた。
声をかけようとした直前、二人は武器を構え、攻撃を始めた。私はふと思い出す。
(そういえば旭と智晴と一緒に祈祷したことなかったな…)
ということで、二人の祈祷を見物することにした。
群青色で中くらいの弓を引き絞り、旭が矢を放つ。それは悪霊の胸に命中した。
続けて智晴が、射的ほどの大きさの黒い銃を構え、発砲した。
…あれ?弾丸は飛んでいったのに銃声が全く聞こえない。っていうか、二人からは全く物音がしない。
少し考えて、すぐに思い出した。
智晴は結界を張る特殊能力を持っていて、銃を使うときは結界で銃声を消しているんだった。
確かに銃声はとても響く。聞き付けた一般人に祈祷を見られたら大変だ。
よく考えられているなぁ、と感心している間に、悪霊は消滅していた。
そして旭も智晴も武器をしまい、早足に立ち去ってしまった。
「あ、行っちゃった」
仕方がないので、私も帰路についた。
夕飯後、私は最近ずっと気になっていたことを、遥姉さんに尋ねてみた。
「ねぇ、遥姉さん。私って小さいとき、白金町に来たことあるっけ?」
遥姉さんは頷いた。
「ええ、サヨちゃんが七歳だった夏、私とおばあちゃんと来たよ。覚えてる?」
私は首を横に振る。
「それが全く覚えていないんだよねぇ…。でもこの前、白金町でおばあちゃんと話していた夢を見たんだ」
「まぁ、七歳だったし覚えていなくて当然よ。私だってあまり覚えてないもん」
そう言って笑った後、そういえば、と手を打った。
「サヨちゃん、確か毎日出かけては嬉しそうに帰ってきていた、っておばあちゃんが言ってた覚えがあるよ」
「毎日出かけてたの?何で嬉しそうだったの?」
「うーん、私はずっと町の祈祷師さんの家で修行していたから分からないなぁ」
当然、私はそんなこと記憶にない。
でも、何故か頭から離れなかった。
と、その時、携帯電話が鳴った。
画面を見ると、圭太から着信だった。
「もしもし、圭太?」
「サヨ!急用だ!」
気軽に出た私と逆に、圭太の声は切羽詰まっていた。
「ど、どうしたの!?」
「学校の近くに強い悪霊が三体も出たんだ!で、今はオレと旭しかいないんだ!頼む、すぐ来てくれ!」
「何だって!?分かった、すぐに行く!」
電話を切り、私は竹刀ケースを持った。
「何かあったの?」
「学校近くに悪霊が出たから行ってくる!」
遥姉さんの返事を待たずに、私は家を飛び出した。