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- Re: 君と進む未来なら【凌輔編】 ( No.219 )
- 日時: 2014/02/04 23:04
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 4n3MlAWB)
【凌輔編 第八話】
誰か、助けて——!
心の内で叫ぶ。すると、
「調子こいてんじゃ…ねえよ…!」
切り裂かれ続けている凌輔が、怒りに震えた声を上げた。
そして次の瞬間…
「ら…ああああああああっ!!」
咆哮した凌輔の身体から、緑色の光が放たれた。
そう、悪霊の力が目覚めたときと同じ光が。
「何…」
眉をひそめ、呆気に取られる史人さん。
その隙を狙って、凌輔は大きくジャンプし、史人さんから距離をおいた。
「おれだって、まだ本気じゃねえ!」
凌輔は槍を構え直すと——
一呼吸後には、史人さんの目の前に移動していた。
手に持った槍を、史人さんの身体貫通させて。
「が…はっ…!?」
信じられない、とでも言うような顔をして、史人さんが鮮血を散らす。
私も目を見張っていた。
凌輔は恐るべき速さで、一瞬のうちに攻撃したのだ。
私には、瞬間移動したようにしか見えなかった。
凌輔は無表情のまま槍を抜くと、再び大きく跳ねて私の前に降り立った。
未だに蛇に巻き付かれ、力が入らない私は、ただ無意識に凌輔を見上げていた。
と、その時——
不意に、凌輔に抱きしめられた。
「——!」
驚いて思考が停止したまま、視界が暗転した。
思わず閉じた目を開けると、そこは今までいた場所ではなかった。
一畳もない空間、四方にはガラスの壁、横には古ぼけた公衆電話…
驚いたことに、ここは電話ボックスの中だった。
座り込んで呆然としながら辺りを見回していると、
「…空間移動したんだ。おれの特殊能力を使って」
すでに身体は離しているが、目の前で同じくしゃがんでいる凌輔が言った。
心臓が大きく跳ねる音を聞きながら、落ち着きを保って口を開く。
「だ、だからこんなところにいるんだね」
納得していると、凌輔が急に俯いて説明を続けた。
「そ、その…さっきのアレは…触れていたほうが空間移動しやすいからであって、
けっ、決してそうしたくてやったんじゃないからな!」
アレって…移動する直前に抱きしめたことだよね?
「なるほど。…あ、身体の力が戻ってる。蛇から離れたからかな」
素直に頷いてから尋ねる。
「で、ここは…?」
「白夜湖の更に奥にある電話ボックスだ。実はこのガラスはマジックミラーで、
外からは鏡にしか見えない。それに、ドアも錆び付いて開かないんだ
だから、偶然見つけて以来、ピンチのときの避難場所として利用している」
「そうなんだ…」
私が頷いていると、凌輔がただ一言、口にした。
「ここで別れよう、サヨリ」
私は耳を疑った。