コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 君と進む未来なら【凌輔編】 ( No.226 )
日時: 2014/02/11 18:32
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

   【凌輔編 第十話】



 しばらくして身体を離すと、凌輔は決意のこもった表情で言った。
「じゃあ…行くぞ」
「うん」

 頷くと、凌輔は私の手を握った。
 私も握り返したその直後——


 目の前が一瞬だけ暗転し、さっきまで戦っていた場所に立っていた。
 そして、戦っていた相手の姿を目で捉える。

「待たせたな、九頭竜」
 凌輔の言葉に、直線上で立ち尽くしている九頭竜こと史人さんが顔を上げた。
 彼はいつも通り、その顔に笑みを浮かべる。

「以外と早かったね。でも、もう逃げるのは無しだよ」
「ああ、そのつもりだ。今度こそお前を倒す」

 史人さんは「言うねぇ」と微笑すると、少し眉をひそめて尋ねた。
「それはともかく…その電話ボックスみたいなものは何?」

 彼の目線の先、背後に目を向けると、そこには
 さっきまで私達が中にいた電話ボックスがあった。
 え?何でここに…?凌輔が一緒に召喚したんだよね…でも何で?

 私も首を傾げていると、私の肩に凌輔の手が置かれた。
 すると次の瞬間——

 視界が一瞬暗転したかと思うと、私は電話ボックスの中にいた。

「えっ…!?」
 私は目を見開いて、マジックミラー越しに凌輔を見る。
 凌輔によって移動されたに違いない。でも、何で…


 ——もしかして、九頭竜の攻撃から私を守るため…!?


 私のその考えを読み取ったのか、凌輔はこちらを向くと——マジックミラーで
 あるため外側からは鏡にしか見えないが——やわらかく微笑んだ。

 その優しさに、息が詰まるほどの嬉しさが込み上げてくる。

 凌輔は史人さんに向き直ると、手に握った槍を構えて言った。
「…始めるぞ」

 その時、すでに史人さん…九頭竜の顔から笑顔が消えていた。
 目を赤く光らせると、背中から九体全ての蛇を出現させ…

「…これだから、人間はくだらないんだ」

 九体の蛇が、一斉に凌輔を目掛けて襲いかかってきた。

 凌輔は大きくジャンプして避けると、上空で槍を構え、近くの木を蹴った。
 その反動で、地面へ下降する速度が増す。
 九頭竜に向かって真っ直ぐに下降する凌輔の槍は、その肩を貫いた。

「くっ…!」
 九頭竜が呻く。相当なダメージを受けたはずだ。

 しかし、九頭竜の動きはさほど鈍らず、一匹の蛇を黒い針に変化させると、
 それを着地したばかりの凌輔に放った。
 それに気付いた凌輔は身体を反らすが、避けきれずに左腕を負傷した。

 痛みに顔を歪めながらも立ち上がり構える凌輔を、
 私はマジックミラー越しに見守るしかなかった。


 でも、不安は感じない。

 凌輔なら倒せるって信じているから——。