コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【題名変えました】君と進む未来なら【共通ルート】 ( No.25 )
- 日時: 2013/11/30 14:46
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第十三話】
現場に着いた私は、その光景に言葉を失った。
背中合わせで構える圭太と旭を取り囲んでいるのは、巨大な獣の姿をした四体の悪霊だった。
「風よ、我が命に従え!」
私は無意識に風の斬撃を発動していた。それは容赦なく悪霊を襲う。
「サヨ!」
「沙依ちゃん!」
二人が私に気付いた。
私は軽く頷き、再び指揮棒を振る。
「草よ、我が命に従え!捕縛っ!」
全身の力を注いで、何とか大量の草を操り、四体すべての動きを抑えた。この隙に二人のもとに駆け寄る。
「二人とも大丈夫…じゃないね。かなり疲れきっている」
そう、圭太も旭も疲労困憊で、かなりの体力と霊力を消耗していた。
圭太が悔しそうに言った。
「ああ…アサと二人きりで二十分ほど祈祷していたからな…。すげぇ強い悪霊で、サヨ達を呼び出す暇が無かったんだ」
旭は肩を上下させながら頷いている。
「圭太ぁー!!旭ぃー!!沙依ぃー!!」
その声に振り向くと、凌輔と智晴の姿が見えた。
「リョウ!トモ!」
二人も悪霊の姿を見て驚いていた。
「こいつら、サヨリが留めてるのか?」
「うん。でも、そろそろ破られるね…」
かなり強く捕縛したのだが、悪霊に絡まる草はぎりぎりと音をたてていた。
智晴が冷静に言う。
「とりあえず、圭太と旭は自衛程度で祈祷しろ。来たばかりの俺、凌輔、沙依で攻撃する」
「悪いな。助かるぜ」
その直後、草の捕縛が一斉に破られた。
「はぁっ!」
智晴が右手を空に突き上げた。
「かなりでかい結界を張った!外には音も聞こえないし姿も見られない!容赦なく祈祷しろ!」
「さっすがトモだぜ!」
既に槍を召喚していた凌輔が、真っ先に斬りかかった。
智晴も銃を連弾する。私も指揮棒を振り上げた。
「大地よ、我が命に従え!」
凌輔も智晴も相手をしていない二体に指揮棒を向ける。
「吸収!」
これは対象物を地面に引っ張り込む技だ。威力は強い反面、成功率は低い。それに二体も相手をするとなると…。
「くっ…駄目か…!」
少し地割れが起こっただけで、やはり成功しなかった。
(ここは使い慣れている風でいくか…)
そう思った、その時だった。
『おお、よくやるではないか』
と語る低い声、そして——
悪霊の口から、青白い炎が吐き出された。
「っ!?」
突然の出来事に身体が固まってしまった。
ヤバイ、直撃する——!!
思わず目を閉じたが…
「沙依!」
「…っ?」
熱くない、痛くない…?
恐る恐る目を開けると、智晴が結界を張って、私の前にいた。
「大丈夫だ、沙依」
「智晴…」
「らあああああっ!」
結界の向こうでは、凌輔が悪霊に飛び掛かり、槍を突き刺していた。そのまま消滅する。
「サヨリに何しやがる!」
「凌輔…」
一瞬だけ涙腺が緩んだが、気を取り直して指揮棒を握った。
「炎よ、我が命に従え!」
悪霊が吐き出した残り火が、再び燃え上がる。
「円舞!」
凌輔の背後に迫っていた悪霊を、青白い炎が包む。そして消滅した。
後ろを振り向くと、残りの二体の悪霊が、圭太と旭によって留目をさされていた。
「あ〜っ!手こずったー!」
凌輔が仰向けに寝転がった。智晴と圭太も座り込む。
私はかなり荒れ果てた現場を直すため、指揮棒を地に向けた。
「…修復」
その様子を眺めながら、頭を回転させていた。
「悪霊の中には、さっきの奴みたいに強い攻撃力を持つものもいるけど…あんなに強いのは初めてだね」
旭が私の考えていたことをそのまま言った。
私は付け足す。
「それだけじゃない。あいつは意思を持っていた。しかも喋れるほどの…」
少しの沈黙の後、智晴が言った。
「今日は考えるのはやめよう。話は明日の午後だ」
「そーだな」
全員が頷き、立ち上がった。
「じゃあ、僕は反対方向だから」
「おう、じゃーな」
軽く手を振り、旭が立ち去った。
「おれ、寄りたいところがあるから、先に行っててくれ」
「ああ、気をつけろよ」
凌輔もその場を後にした。
「俺は真っ直ぐに帰宅するけど、圭太は?」
「オレ、道場で少し休んでいくわ。この近くにあるからな」
二人が私を見て言った。
「サヨ、疲れているなら道場で休んでいいぜ」
「帰宅するなら家まで送るよ」
少し悩んだあと、私は答えた。
「んー、遥姉さんが心配してると思うから…家に帰るよ」
「そっか。じゃ、また明日な」
「ゆっくり休めよ、圭太。…じゃあ沙依、行こうか」
「うん」
私は智晴と歩き出した。
「…智晴」
「ん?」
「さっきは助けてくれてありがとう。智晴がいなかったら、きっと私…」
死んでいたかもしれない。その言葉を紡ぐ前に、智晴が私の頭に手をのせた。
「大丈夫だ。俺は仲間を見殺しにはしない。いつでも頼ってくれよ」
「…!…うん!ありがと」
その言葉が心強くて、私は満面の笑みで頷いた。