コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【再開しますた】君と進む未来なら【共通ルート】 ( No.28 )
- 日時: 2013/11/17 14:18
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第十五話】
「沙依ちゃんは初耳だろうけど、僕は八歳のときに白金町に引っ越してきたんだ。
それまではここから離れた都市に住んでいて、一族はそこで祈祷をしていた。
六歳で祈祷師の力が目覚めた僕も、その街で祈祷をしていく…はずだった。
これは圭太君達にも初めて話すことだけど、僕には五歳上の兄がいたんだ。
同じく祈祷師の兄さんは、力が開花したばかりの僕に祈祷を見せ、祈祷についてたくさん教えてくれた。
この先もずっと、二人で祈祷していこうと約束したんだ。
だけど、僕が七歳の時の冬、その約束は打ち砕かれた。
ある日、僕と兄さんが二人きりで留守番していた時、庭に悪霊が現れた。
僕らは祈祷しようと庭に出た。
その時、気づいたんだ。その悪霊がとんでもなく強い霊力を持っていることに。
親からは、強い霊力を持つ悪霊には近付くなと言われていた。だけど、兄さんは立ち向かった。反面、僕は怯えて家の中から出られなかった。
兄さんは果敢に矢を放った。けれど、悪霊はなかなか弱まらない。それでも、兄さんは抗い続けた。
そんな中、悪霊は兄さんに攻撃してきたんだ。兄さんは次第に傷だらけになり、足もふらつき始めた。
僕はいてもたってもいられなくなり、庭に飛び出ようとした。
その時だった。
悪霊から突き出た刀状の影と、兄さんが束状に持った何本もの矢。
その二つが、それぞれの身体に深く突き刺さった。
どうやら相討ちだったらしい。
悪霊は消え、兄さんも二度と起き上がることはなかった。
僕はその後、しばらく力が使えなかった。そんな僕に高峰のお婆様が、違う環境に引っ越して気持ちを切り替えたらどうだと提案してくれた。
そして、白金町に来たんだ」
その壮絶な過去に、私達は酷く衝撃を受けた。
いくら何でも残酷すぎる…。
何も言えずに俯いていると、不意に智晴が口を開いた。
「俺は絶対にお前達を見殺しにしない」
顔を上げると、智晴は真剣な眼差しをしていた。
「俺は死なない。悪霊から祈祷師も一般人も守る。だから…信じてくれ、旭」
すると、圭太と凌輔が頷いた。
「オレもトモと同じだよ。一緒にいれば大丈夫さ」
「おれだって簡単には殺されないからな!」
「トモ君、圭太君、凌輔君…」
私もようやく言った。
「私はいなくなったりしないよ。だから、一緒に祈祷しよう」
すると、旭は安心したかのように笑顔を見せた。
「みんな…ありがとう…!僕も絶対に負けないよ!」
その言葉は、勇者の誓約のように思えた。
この時はまだ、旭にはもっと重大な秘密があることなんか、全く知りもしなかったんだ。