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Re: 【再開しますた】君と進む未来なら【共通ルート】 ( No.29 )
日時: 2013/10/03 06:03
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)

   【第十六話】



 それから二週間が過ぎた。

 その間、とりわけ強力な悪霊は出てこなかった。現れる悪霊は「普通より少し強いかなー」程度のものばかりだ。
 学校の課外も終わってしまったが、由奈を始めとするクラスメイト達と出掛けたりした。

 圭太、旭、凌輔、智晴とは、祈祷もするけど毎日のように遊びまわっている。
 活発な圭太、おっとりした旭、いじられ役の凌輔、面倒見のいい智晴。
 四人との思い出は、宝石のようにキラキラと輝いていた。



 日が沈みかける夕方、個人的な買い物を終えた私は、商店街を歩いていた。
 夕方の商店街は、昼間以上に賑わっている。
「クラスの子に会えるかもなぁ…」
 そう呟くと、タイミングを見計らっていたかのように声をかけられた。

「あっ!沙依!?」
 振り向くと、そこにはジャージ姿の女子高生がいた。
「由奈!部活だったの?」
「そうよ。もう大会は終わっちゃったけどね」
 由奈はテニス部に所属している。結構強いらしい。

「沙依、時間ある?」
 訊ねられて、私は腕時計を見た。五時四十分。遥姉さんには七時までには帰ると伝えてある。
「うん、一時間くらい大丈夫だよ」

 すると、由奈は身を乗り出した。
「ほんとっ!?あのね、ここの近くに新しくファンシーショップができたの!一緒に行こう!」
 そういえば、私もその店が気になっていたんだった。

 私が同意すると、由奈は数歩進んで左にまがり、細い路地に入った。
「わあ、人が全くいない」
「この道ならスイスイ進めるし、お店のある通りへの近道なのよ」
「へえ〜よく見つけ…」
 言いながら由奈の方を振り返って、私は目を疑った。

 由奈の背後に悪霊がいたのだ。
 それだけじゃない。その悪霊は、二週間前のと同じくらいの強い霊力を纏っていた。

「どうしたの?沙依」
 由奈の言葉に、私は慌てて答えた。
「な、なんでもないよ!…っ」

 とたんに、脳内が混乱し始める。
 こんな強い悪霊を放っておくわけにはいかない。だけど由奈がいる。祈祷師のことを由奈に知られるわけにはいかない——。

「そう?本当に?」
 由奈は私の顔を覗き込む。
「う、うん…」
 悪霊は私を嘲笑うかのように揺れ動く。

 圭太達に連絡する手もあるが、それでは遅い。
 一体どうすればいいの…!?

 心の中で叫んだ、その時だった。

「うん…?」
 ふらり、と由奈の身体がふらついたかと思うと、そのままバランスを失った。
「由奈!?」
 急いで抱き止める。どうやら意識を失っているようだ。

 何で?何で由奈はいきなり気を失ったの?もしかして、あの悪霊の仕業…!?
 悪霊の方を向く。

 ——次の瞬間、私の横を疾風の如く駆けていく者がいた。

 誰…!?
 そう思う間もなく、その人物…青年は悪霊に飛び掛かり、右手を払った。

 すると、悪霊が綺麗に消滅したのだった…。