コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【再開しますた】君と進む未来なら【共通ルート】 ( No.30 )
- 日時: 2013/10/03 05:53
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)
【第十七話】
「なっ…!?」
小さく声をもらすと、その青年が振り返った。
歳は大学生…二十歳くらいだろうか。私とはそんなに年齢差がないように思えた。
武器は持っていない。ということは浄化系?っていうか、そもそも祈祷師なの?
呆然とする私に、青年が声をかけた。
「やあ、大丈夫かい?」
私も訊ねる。
「あ…あなたは…祈祷師?」
「いや、ただの邪魔者排除人さ」
そう答えて、青年は薄笑いを浮かべた。
「排除人…?どういうことですか?祈祷師じゃないんですか?あなたの言う邪魔者って悪霊のことですよね?」
「悪霊が敵の人間が全て祈祷師だとは限らないよ」
「…?」
ただただ首を傾げる。祈祷師以外の悪霊払いなんて聞いたことがない。
「あと、その子は俺が寝かせただけだから心配しなくていいよ。じゃ」
そう言い残し、青年は背を向けた。
「ちょ…待ってください!」
青年を追おうとしたその時、腕の中の由奈がぴくりと動いた。
「ううん…あれ…?私、寝てた…?」
「由奈!」
目覚めた由奈に気を取られているうちに、青年は大通りへ去っていった。
「うーん…沙依、私いつから寝てた…?」
咄嗟に言い訳を考える。
「あ…えーっと、ついさっき、一瞬だけだよ」
「そうなの?なんでだろう、貧血かな?…ごめん沙依、安静にしたいから今日は帰っていい?」
少し罪悪感を覚えながら、私は頷いた。
「そうだね。休んだほうがいいよ」
「うん、そうする。じゃあ、また今度行こうね」
由奈は軽く手を振って、入った方と逆方向の大通りへと歩いていった。
まだ、あの青年は近くにいるかもしれない。私は大通りに飛び出した。
とりあえず左に曲がって走る。
すると運のいいことに、人混みを掻き分けた先の真正面に青年の背中が現れた。
「待ってください!」
青年の服の裾を掴むと、やや驚いた表情をして、青年が振り向いた。
「あれ、見つけられちゃった」
「ちょっと来てもらいますからっ!
私は青年の服を掴んだまま、すぐ隣に開いた路地裏に引っ張りこんだ。
高身長の青年を見上げような格好で訊ねる。
「本当に祈祷師じゃないんですか?私、祈祷師以外で悪霊払いが出来る人なんて聞いたことないですけど」
すると青年は、笑顔を浮かべながら言った。
「だからさっきも言ったでしょ?俺は排除人だって」
その笑顔と言葉が合わさる。駄目だ…きっと何回聞いても同じ返答しかしないだろう。
「あ〜〜〜もう分かりました…。じゃあ名前だけでも教えてください。私は沙依です」
「へぇ、沙依さんかぁ。俺は史人。十九歳だ」
この質問にはちゃんと答えてくれた。年齢は聞いてないけど。
「ああ、そうだ。俺のことは他の人には話さないでね。一応、俺の存在は誰にも明かされてはいけないものだからさ」
「えぇっ、そうなんですか!?」
その理由はよく分からないが、知ってしまった私はどうなるのだろうか。
そう不安に思っていると、史人さんは面白そうに笑って言った。
「ははっ、明かさない限り君は大目に見てあげるよ。何せ俺が君に見せちゃったからね」
「そうですか…よかった」
ほっとして表情を緩める。その隙に、史人さんが背中を向けた。
「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。また会うかもね」
私が返事をする前に、史人さんは去ってしまった。