コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 夕闇茜空 ( No.4 )
- 日時: 2013/11/30 16:58
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【プロローグ1】
六月中旬の午後六時。夕闇が迫り、茜色に染まった空の下。
セーラー服を身にまとい、鞄の他に竹刀入れを背負った私——町田沙依は、友人と一緒に校門を出た。
「もう暑いね〜」
「いつの間にか夏が来てたよね」
隣を歩く親友の咲は、首から下げたスポーツタオルで汗を拭った。
「まだ早いけど、夏といえば夏休みだよねぇ。咲はどっか出かけたりするの?」
「うん、親戚の家に行ったりするかも。沙依は?」
「私はまだ未定かなー。でも多分暇だと思うから、いつでも遊びにさそって!」
「へへっ、わかってるよぉ」
笑い合っているうちに別れ道に迫り、私は咲に手を振って一人で歩き出した。
——と、その時。
「————!」
気配を感じた。
「近くにいる…!」
私はその方角へ走り出した。
この世には、今は亡き者の思念である「霊」が存在する。
通常なら、早いうちに霊界へ導かれるが、稀に生きた人間の邪心に触れ、悪霊と化すことがある。
また、この世への未練から霊界を抜け出し、悪霊となるケースも存在する。
私はその悪霊を払う力を持つ、「祈祷師」である。
たった今、私は悪霊の気配を感じ取ったのだ。
ちなみに、祈祷師は霊感が強いため、いつでも霊の気配を察知することができるのだ。
数分後、廃ビルの屋上にいる、目当ての悪霊を見つけた。
私は強い眼差しを向け、悪霊に近づいていく。
そして、ずっと背負っていた竹刀入れから、一本の長い指揮棒を取り出し、大きく振った。
すると、廃ビルの壁をつたっていた蔦が一斉に動き出し、悪霊に絡みついた。
「はぁっ!!」
もう一度振る。今度は穏やかに吹いていた風が唸り、刃と化して悪霊を切り裂く。
悪霊はそのまま消滅した。
これが、私の祈祷師の力だ。
この指揮棒——頭部に赤い輪がついている1.6メートルほどの杖を使い、
風や草、火、水などの自然物を操ることができるのだ。
母の家系に生まれた女は、代々この力を受け継いでいるのだという。
つまり、母の女先祖は皆、祈祷師として悪霊払いを行ってきたらしい。
ちなみに、祈祷師には攻撃系と浄化系の二つのタイプがある。
私のこの力はもちろん攻撃系だ。
そして攻撃系は若者向けの力であるため、学生期を過ぎると祈祷師降板となる。
「ふぅ、任務完了っと」
私は伸びきった蔦をもとに戻し、指揮棒を竹刀入れにしまった。
この指揮棒がないと強い力が発動できないため、教師には「曾祖母の形見なんです」と言い訳して、
常に持ち歩いているのだ。
放り投げておいた鞄を持ち、私は帰路についた。