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Re: 【コメ募集中!】君と進む未来なら【共通編 】 ( No.41 )
日時: 2013/12/21 16:19
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)

   【第二十二話】



 翌日、私たちは再び小さい森林に来ていた。今回は圭太と旭も一緒だ。

「で、沙依、沼は何処にあったんだ?」
「奥のほう。着いてきて」
 私を先頭に奥へと歩くこと数分、段々と明るくなってきた。

「ほら、すぐそこに沼と祠が——」
 言いながら森林を抜け、目の前に広がった光景に目を疑った。
 そこには…よく知っている先客の姿があった。

「やぁ、沙依。待ってたよ」
「史人さん!?」

 そう、昨日と同じように、史人さんが立っていたのだ。

「誰だ?サヨの知り合い?」
 圭太に尋ねられた。他の三人も不思議そうな顔をしている。
「あー、えっと、この人は…」
 私が答えようとしたその時——

 いつの間にかすぐそばに移動していた史人さんが、私の手首を掴んだ。
 しかも、物凄く強い力で。

「彼らへの説明は不要だよ。俺は君だけに用があるんだ」
「ふ、史人さん…何を…?痛い…」
 手首にのし掛かる強烈な圧迫力に顔を歪める。

「てめぇ何しやがる!」
「サヨリを放せ!」
 圭太と凌輔が史人さんに掴みかかろうとするが、史人さんは二人を片手ではね除けた。

「史人さん、私への用って何ですか…?あと…」
 私は何よりも気になっていたことを尋ねた。

「なんでここにいるんですか?」

 すると史人さんは、よくぞ訊いてくれた、と言いたそうな顔をした。
「それはね…」

 そして、いつものように笑顔を見せた。


「俺が九頭竜だからだよ」


 次の瞬間、とてつもなく強い霊力が史人さんから放たれた。

 史人さんが…九頭竜…!?

 私は驚きすぎて声が出ない。
 四人も目を見開いている。

「何っ!?」
「九頭竜…?お前人間だろ!?」
「でも、こんなに強い霊力…」
「ああ…間違いない」

 唯一冷静を保っている智晴が、史人さんを見据えて言った。
「どうやら九頭竜で間違いないようだ。今のお前は仮の姿ってことだな」
「ああ、俺は嘘なんかついてないよ」

 私は混乱する頭を整理し、さっき尋ねたことをもう一度訊いた。
「私の…私の用って何ですか」

 史人さんは手首を掴んだまま答える。
「君を力封じの生け贄にしたいんだ。俺を倒すには、力尽くで祈祷するか、祈祷師の女を生け贄として捧げ、俺と共にこの沼に沈める他はない」

「「「「「生け贄!?」」」」」
 私達は同時に叫んだ。
 私を…生け贄に!?

 旭と凌輔が反論する。
「そんなの認めないよ!」
「大体何でサヨリなんだよ!?」

「沙依は生け贄に相応しい霊力と強い意思を持っているからだ。それに——」
 史人さんはそこで切って、正面から私と向き合った。

「俺が気に入ったから」
 直後、彼の両目が赤く光り——

「沙依、逃げろ!!」
 その言葉が届くのと同時に、史人さんが私の首元に噛みついた。

「「「「!?」」」」
 四人は呆然として声が出ないようだ。

 私はただ、首筋に走る痛みを感じていた——。