コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 夕闇茜空 ( No.5 )
- 日時: 2013/11/30 17:01
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【プロローグ2】
「ただいまー」
玄関のドアを開けると、お母さんが出迎えてくれた。
「おかえり、沙依。…あら、もしかして悪霊に会った?微かに霊力を感じるわよ」
元祈祷師であるお母さんは、祖母…つまり、お母さんのお母さんより
強い霊感を持っている。
「うん。でも雑魚だったよ」
「そう、お疲れ様。ところで、帰っきたところで悪いんだけど、話があるの」
「何の話?」
とりあえずリビングに移動する。すると、お母さんは真剣な表情で話し始めた。
「夏休みの間、白金町に滞在してもらいたいの」
「白金町?」
聞き覚えがある町だ。
少し考えて、すぐ思い出した。
「確か、遥姉さんが結婚してから住んでいる町だよね。
あと、小さいときに行ったことがあるよね」
「あら、よく覚えているわね」
遥姉さんとは、お母さんのお姉さんの娘…つまり私の従姉のことだ。
二十五歳で、去年結婚したばかりである。
母方の実家で新年や夏休み中などの長期休日中に顔を合わせる程度だが、私達は仲が良い。
「で、何で遥姉さんが住んでる町に?」
すると、お母さんは驚くべきとこを言った。
「実は今年の夏、白金町に強力な悪霊が現れると言われているのよ。
それも、浄化が効かないほど強いらしいの。」
「えっ!?」
私は目を見開いた。
祈祷の威力は浄化の方が強い。
しかし、浄化は言霊の攻撃なので、あまりにも強力な悪霊は言霊をはね除けてしまうのだ。
だが、そのような悪霊が現れたためしはない。
もし現れた場合、倒すのは相当手間がかかると言われている。
「浄化が効かないから、攻撃系で攻めて倒すしかないってことね」
「そうよ。あと、もちろん一人で倒す訳にはいかないから、もともと白金町に住んでいる祈祷師と協力して
退治することになるわ」
「えっ!ほんと!?」
私は思わず立ち上がった。
一般人の友達はそれなりにいるが、祈祷師の友人が出来たことはない。
というか、攻撃系の祈祷師と会ったこと自体ない。
浄化系の大人や遥姉さんと一緒に退治したことはあるけど。
だから、初めての祈祷師の友人が作れるチャンスなんだ!
目を輝かせている私を見て、お母さんは優しげに笑った。
「ふふっ、仲間が出来るのはいいことよね。
…どう?悪霊払い出来そう?」
お母さんに尋ねられ、私は思い悩んだ。
祈祷師の友人は欲しい。
でも、私に強力な悪霊を倒すことが出来るのだろうか。
そんな私に、お母さんは言った。
「沙依、確かに不安かもしれない。
けど、遥ちゃんは沙依の力を信用して、あなたを白金町に呼んだのよ。
沙依なら倒すことが出来る、って」
その言葉が、私の背中を押した。
私は口を開く。
「私、行く。期待に答えなくちゃね。
あと、強力な悪霊なんて放っておけないもんね」
お母さんはにっこりと微笑んだ。
「沙依ならそう言うと思ったわ」
「まあねー!」
忘れられない夏が、幕を開けようとしていた。