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- Re: 【コメ募集中!】君と進む未来なら【共通編 】 ( No.57 )
- 日時: 2013/12/14 17:03
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第二十六話】
九頭竜騒動から一日経ったが、私の周囲にも私自身にも特にトラブルは起こらなかった。
だけど、四人は九頭竜から私を守ろうと、屋外にいるときは常に一緒にいてくれた。
彼らの気遣いはとても嬉しいし安心できる。だけど…
どうしても九頭竜こと史人さんと話がしたいのだ。
ただ、それは不可能なことであろう。
そう思っていたのだけれど…
夜、寝ようとしていた時のことだった。
夏の夜風が吹き抜ける窓から、求めていた声がした。
「こんばんは、お邪魔するよ」
うとうとしていた私は即座に眠気をふっ飛ばした。
「史人さんっ!」
私が驚いた声をあげると、史人さんは窓の縁に腰掛けてクスリと笑った。
「わ、私がここに住んでること、知ってたんですか!?」
「君の霊力を辿ることなんて簡単なことだよ」
「そ、そうなんですか…」
驚きながらも納得する。
「あれ、どうやら追い払わないようだね」
「き…訊きたいことがあるんです」
「へぇ、どんなこと?」
史人さんが首を傾げる。
「初めて会ったとき、悪霊のことを邪魔者って呼んでたのは何故ですか?
史人さんにとっては敵ではないですよね?」
答えはすぐに返ってきた。
「やけにウヨウヨいて邪魔だからね。敵とか味方とか関係ないよ」
私は再び尋ねる。
「あなたは人間じゃないんですか?」
「一応『悪霊』ってことにしといて」
一応…ってどういうことだろうか。
とりあえずそれはおいといて、私は最後の質問をした。
「その…私のどこが気に入ったんですか?」
すると、史人さんは声を出して笑った。
「あはははっ、君は本当におもしろいね。それはね…」
そして、今まで見せたことのない魅力的な笑顔で答えた。
「可愛いところ」
「…!」
その言葉と表情に、思わずドキッとしてしまう。
何か言い返したいのに言葉が出てこない。
そんな私を見て、史人さんは可笑しそうに笑う。
「沙依は表情が豊かだなんだね。今の君も凄く可愛いよ」
「〜っ!か、からかうのはやめてください!」
史人さんはしばらく笑っていたが、不意に窓の縁に足をかけた。
「さてと、長居は危険だからこれでおいとまするよ」
そして私に背を向けたが、再びこちらを振り向いて言った。
「あ、そうそう。俺に着いていくと決めたら沼に来てね。それじゃ」
私の返事を待たずに、史人さんは窓の外へ飛び降りた。
「そう…だった…」
さっきまで、敵だと判明する以前と同じように会話をしていたから、
生け贄の件を忘れかけていた。
四人は私を生け贄にしないと言ってくれている。
だけど私は、「絶対に生け贄になりたくない」とは思っていないのだ。