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- Re: 【コメ募集中!】君と進む未来なら【共通編 】 ( No.60 )
- 日時: 2013/11/30 16:56
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第二十七話】
いつもの修行場所、薄暗い竹藪の中で、オレは刀を振りかざす。
刃がひゅんひゅんと空気を裂く音を何回聞いても、オレの心は晴れないままだ。
ようやく素振りを止めて、思わず本音をもらす。
「オレが特殊能力を持っていれば…」
もっと強くなって、九頭竜を倒せるかもしれないのに。
一人ため息をついた、その時だった。
「なら、あなたに力を与えましょうか?」
「…っ!誰だ!」
そう振り向いて驚愕する。
そこにいたのは、人間でも熊でもなく…女の霊だった。
しかし、霊から発せられている霊力から、まだ悪霊にはなってないようだ。
驚いたのはそれだけではなかった。
その霊に見覚えがあったのだ。
そう、確か白金朝刊に載っていた…
霊がニコッと微笑んで言った。
「私はつい最近死んだばかりの祈祷師。あなたは…圭太君でしたっけ?」
やっぱりあの人だった。そう確信しながら答える。
「そうだけど…オレに何の用?」
すると、彼女は寂しげな表情に変わった。
「私、もう死んだのだけど、魂にまで浸透している特殊能力が捨てられなくて成仏できないの」
そして、オレのすぐそばまで来て、耳元で囁いた。
「このままでは悪霊になってしまう…。だから、私の特殊能力を受け取ってくれないかしら?」
- - - - - -
今日もいつもと同じように、五人で集まっていた。
智晴が尋ねる。
「今のところ何ともないか?沙依」
「うん」
昨日、史人さんが家に来たとは言えないからなぁ。
九頭竜騒動のあった日は様子が変だった智晴だが、昨日からはいつもの智晴に戻っていた。
何があったのかは分からないけど…。
そして、いつもの様に雑談を始める。
「宿題終わった?」
「げっ、忘れてた!やべぇ数学とか全然分かんねぇ」
「じゃあ俺が凌輔に教えてやるよ、掛け算」
「遠慮するわ!ってか掛け算くらい分かるわ!」
談笑しながら、私はあることに気付いた。
いつもは会話の中心となる圭太が、難しい顔をして一言も喋らないのだ。
「圭太、どうしたの?」
私が尋ねると、圭太ははっとして首をふった。
「い、いや、何でもねーよ!えーっと、凌輔の身長が伸びない話だっけ?」
「違ぇよ!おれの身長は毎日伸びてるし!」
しばらく話に加わった圭太だが、再び黙ってしまった。
やっぱり様子が変だ。
私が言葉をかけようとした時、不意に圭太は立ち上がった。
「あー、ごめん。オレ、用事があるんだった。てな訳で先に抜けるわ」
「お、おう?」
「?」
軽く手を振って去っていく圭太。
私はいても立ってもいられなくなり、三人に「ちょっと圭太に聞きたいことが」と言い残して、
圭太を追いかけた。
「圭太!」
腕を掴むと、圭太は立ち止まった。
「ねぇ、どうしたの?いつもの圭太らしくない…。何かあったの?」
そう尋ねると、少し間を置いてから、圭太が笑いながら言った。
「ははっ、何言ってんだよサヨ!オレはいつも通りだぜ?心配すんなって!」
そして、私の手をそっと離させると、「じゃあな!」と足早に去ってしまった。
圭太はいつもと同じように振る舞ったつもりだったのだろう。
しかし、私は気付いていた。
その笑顔が、作り物だということに。
「圭太…」
一体、どうしたのだろう?