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Re: 【コメ募集中!】君と進む未来なら【共通編 】 ( No.68 )
日時: 2013/12/17 20:19
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)

   【第二十九話】



 夕日が沈んだ直後の白金町の名所、白夜湖。
 おれはそこで祈祷をしている最中だ。

 槍を振るいながら考える。
 ——九頭竜を倒すには、何をするのが最善だろう?

 飛び掛かってくる悪霊を避けながら、ぽつりと呟く。
「強くなるには何をすればいいんだ…?」

『悪霊を払いまくればいいんだよ』

「——!?」
 不意に何者かの声が聞こえた。
 周りを見渡すが、人気はない。

 …いや、この声は、耳から入ってくるのではなく、
 頭の中から直接響いてくる…?

 声は再び聞こえてきた。
『ほら、RPGって、いろんな敵と戦うごとにレベルアップしていくでしょ?
 現実だってそれと同じだよ』

「戦うごとに…レベルアップ…」
 そしてラスボスを倒し、ゲームクリア。
 ゲーム好きなおれには、その嬉しさがよく分かる。

『そう。悪霊を払って払って払いまくれば、君は強くなれるんだ』

 声はそこで途切れた。
 おれは悪霊にとどめを刺すため、ゲームのアバターの如く槍を振りかざした。



 - - - - - -



 夕日が町を照らす頃、私は凌輔と一緒に町の見回りをしていた。
 今はまだ見つけていないが、そろそろ現れてくるだろう。

「凌輔、昨日は白夜湖に行ってきたんだよね。どうだった?」
「一体だけいた。ああ、でも…」
「でも?」
「あ、いや、何でもねぇ」

 少し気になるが、私はそれよりも気になっていることがあった。
「昨日、遥姉さんとスーパー行ったとき、旭に二回会ったんだけど、
 なぜかよそよそしかったんだよね…。
 圭太も一昨日変だったし、何かあったのかな?」

「旭まで変なのか?うーん…おれには分かんねーなぁ…」
 凌輔がそう言った時、悪霊の気配を感じた。

「あっ…近くにいる!」
「ほんとかっ!何処だ!?」
「こっち…!」

 気配は、まだ営業していないリンゴ農園から感じる。
 ちょっと申し訳ないが、私達はリンゴ農園に侵入した。

 そして、農園の奥に悪霊はいた。

 まずはいつもの様に軽く打ち合わせだ。
「凌輔、私が最初に動きを止め…」

「うおおおおっ!」
 しかし、私の言葉を聞かずに、凌輔は悪霊に飛び掛かっていった。

「ちょ、凌輔!?」
 私も慌てて力を発動する。
 どうしたんだろう、いつもよりきびきびしている…?

「風よ、我が命に従え!捕縛!」
 風圧が悪霊の動きを押さえる。
 凌輔は悪霊に次々と刃を振りかざす。

「よし、私も…あれ?」
 私も攻撃しようとした時、悪霊は消滅してしまった。祈祷されたのだ。
 つまり、凌輔が一人で祈祷した、ということだ。

 何で?いつもなら交互に攻撃して祈祷するのに…。

 はっとして凌輔を見ると、彼は息を切らせて流れる汗を拭っていた。
「もういねえのか…?出てこいよ!」

「出てこい」なんて…いつもは言わないのに…。

 と、その時、再び気配を感じた。
 今度は凌輔も気づいたらしい。

「へへっ…まだいるじゃねーか。行こうぜサヨリ」
 そう呟くと、凌輔は走り出した。

「ちょっ…待って!」
 慌てて追いかける。さっきのでだいぶ体力を消耗したんだから、
 代わりに私が祈祷しないと…!

 凌輔とリンゴ農園を出ると、そこには悪霊の他にもう一人いた。
「トモ!」
「智晴!」

 私達が呼ぶと、銃を構えた智晴が驚いた顔をして振り向いた。
「わっ!お前らいたのか!ちょうどいい、手伝ってく…」

 しかし智晴が言い終わらないうちに、またしても凌輔は攻撃を始めた。

「凌輔!」
「おい、どうした!?」

「このっ!たあっ!」
 凌輔はまるで私達の存在を忘れてているかのように攻撃している。

「落ち着け凌輔!」
 智晴が銃を連発すると、すぐに悪霊は消滅した。

「お、お前…」
 激しく肩を上下させる凌輔を、智晴が困惑した表情で見る。
 私が何か言おうとすると、凌輔は立ち上がって私達に告げた。

「ちょっと悪霊探してくる。トモ、サヨリを頼んだ」
「ちょっと凌輔——」
 私が呼び止める前に、凌輔は駆け出して行った。