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- Re: 【コメ募集中!】君と進む未来なら【共通編 】 ( No.77 )
- 日時: 2013/11/30 20:49
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第三十話】
太陽が昇り始めた朝。
俺は長らく出張していた父と会話していた。
「智晴、お前は優れた祈祷師だ。
お前なら九頭竜を倒せると、父さんは信じているぞ」
「ああ、絶対に倒してみせる」
強く頷く俺に、父は「無理はしないようにな」と言い残して部屋を出た。
自然と言葉が漏れる。
「前と比べると、随分信頼してくれるようになったな…」
昔の俺は、何もできない子供だった。
ただ親族や家族にまで恐れられている自分が怖かった。
そんな俺を救ってくれたのは——…
- - - - - -
凌輔が走っていった方向を呆然と見ながら、私は呟いた。
「圭太も旭も、凌輔まで…一体どうしちゃったの…?」
何より、三人とも何があったのか教えてくれないことが寂しい。
私は無意識に、智晴の服の裾を掴んでいた。
「…お願い、智晴だけは変わらないで。いつも通りでいて」
そう言うと、智晴は私の頭に手をのせた。
「ああ、俺はお前が悲しむようなことはしない。
だから安心してくれよ、沙依」
その言葉を聞いた途端、私の心がだいぶ和らいだ。
「智晴、ありがとう。…あっ」
私はあるものに気付いて、辺りを見渡した。
「どうした?…っ!」
どうやら智晴も気付いたらしい。
「また…悪霊の気配がする!」
「ああ。それにかなり強い…」
「行こう!」
走ること数十秒、悪霊を見つけた。
その悪霊は、猫の頭と尾を二つ持つ、禍々しい姿をしていた。
「とりあえず攻撃して、弱まったところで対策を考えよう」
「了解!」
智晴が結界を張ったのを合図に、私達は攻撃を始めた。
「大地よ、我が命に従え!」
私は大地技を、智晴は片手銃を連射する。
私達の攻撃を受けた悪霊は、なんと二体に分裂した。
「うわっ、別れた!?」
「くっ…一対一でいくぞ!」
私は片方の悪霊に向き直った。
「風よ、我が命に従え!斬撃!
ええい斬撃斬撃斬撃ぃ!!」
風の刃を悪霊に何発も喰らわせる。
その風のせいで土煙が舞い、悪霊の姿が見えなくなる。
そろそろとどめだ。
「大地よ、我が命に——」
その時、悪霊が土煙を裂いて飛び出してきた。
「きゃあっ!」
すぐさま避けるが、そのせいで足を捻ってしまい、指揮棒を投げ出してしまった。
「いっつぅ…」
足に鈍い痛みが走る。
指揮棒は悪霊の横に落ちている。
取りに行こうとしても…足を捻って痛めているから間に合わない。
「キシャアアアアアア!!」
悪霊は私に向かって飛び掛かってきた。
「——っ!」
私は避けることも出来ず、ただ目を見開くことしかできなかった。
やられるっ…!
その時、私に影が被さった。
「大丈夫か!?沙依!」
それは智晴だった。
銃を持っていない方の左手で結界を張り、悪霊を阻んでいた。
「智晴!」
はっとして智晴が相手をしていた方の悪霊を探すが、見当たらなかった。
既に祈祷されたのだろう。
智晴は左手を押し出した。
「はああああっ!」
押された悪霊が弾き返される。
その隙に智晴は左手の結界を解き、銃を連発した。
無数の弾丸を浴びた悪霊は、苦しんだ末に消滅した。
「智晴っ!」
直ぐ様智晴に駆け寄る。
そして、彼の左手が赤く染まっていることに気が付いた。
「智晴…血が…!」
本人も今気付いたかのように左手を見やった。
「あ、本当だ。でもこれくらい大したことない。それより沙依は…」
私は思わず智晴に尋ねていた。
「ねぇ…智晴は何で、いつも私のことを守ってくれるの…?」
私は続ける。
「初めて強い悪霊と戦ったときも、真っ先に私を守ってくれたよね…?」
智晴は驚いた表情をして私を見ている。
「沙依…」
すると、智晴は小さな声で呟いた。
「たとえお前が覚えていなくても、俺は——」
しかしそこで言葉を切り、微笑んで言った。
「お前は大事な仲間なんだから、守って当然だろ?」
そして、真顔に戻り、私の足を見た。
「そろそろ暗くなるし、家まで送るよ。
足、捻ったよな。歩けるか?」
「あ…うん。もう何ともないよ」
そう返事をすると、智晴は私の頭に手をのせて微笑んだ。
その動作が、何故か懐かしく感じた…。