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Re: 君と進む未来なら【圭太編 更新しました】 ( No.90 )
日時: 2013/12/30 16:55
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)

   【圭太編 第三話】



 私達は、しばらく言葉が出なかった。
 九頭竜の…力…!?

「それって…どういうことですかっ!?」
 ようやく震える声を絞り出す。
 すると史人さんは黒い笑みを浮かべて言った。

「全ては君のせいだよ、沙依」

「え…!?」
「何っ…!?」
 圭太も我に帰ったようだ。驚きの声をあげた。

「もし沙依が月村君のところに来なかったら、彼に力を与えたりなんかしなかった。
 全ては君を惑わせ、生け贄にさせるためさ。

 ちなみに言っておくと、月村君は強力な攻撃力を得たけど、
 力の制御は出来ないから、暴走する可能性が高いよ」

 その瞬間、私は酷くショックを受けた。
「そ…んな…」

 私が…
 私が圭太逹との約束事を破って、一人で外出なんてしたから…!

「サヨは悪くなんかねぇ!オレのせいだ!
 だからサヨを傷つけるのはやめ——ぐはっ!」
 突如、圭太が苦しみ出した。

「な、何を…」
「俺から力を得た君は俺の支配下にある。だから君は力を制御できない。
 霊力で君を締め付けることくらい簡単さ。少しの間黙ってもらうよ」
 圭太に冷たく言うと、史人さんが私の方を向いた。

「さぁ沙依、一つ提案してあげるよ。
 君が生け贄になるなら、月村君をもとに戻してあげる」

「…!」
 答えは、もう決まっていた。


 圭太が助かるなら、どうなってもいい。


「…私は…」
 と、その時だった。

「やめろ…サヨ…!」

 圭太が苦しみながら言った。
 はっとして振り向く。
 圭太は、私の方をしっかり見て続けた。


「オレは…お前を九頭竜なんかに渡さないって決めたんだ…!
 オレは大丈夫だ!…こんな力…すぐに制御できるようにしてみせる!

 そして九頭竜、お前を倒す!!」


「…!!」
 その懸命な言葉と強い意志に、心を打たれた。

 …そうだ、圭太は負けない。有言実行するに違いない。

 私は顔を上げ、史人さんに向き直った。
 自分の意志を告げるために。

「私は生け贄になりません。史人さん…いいえ、九頭竜、あなたを祈祷します」

 すると次の瞬間、史人さん…九頭竜から笑顔が消えた。
「…そうか。なら祈祷してみなよ。仮契約も破棄だ」

 低い声でそう言った直後、首に鈍い痛みが走った。
 はっとして傷を隠すための布を剥がして首筋に触れると、
 噛み跡が綺麗に消えていた。

 それを見届け、史人さんは私達に背中を向けて去っていった。