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Re: 君と進む未来なら【圭太編 更新しました】 ( No.95 )
日時: 2013/12/10 23:04
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 8keOW9sU)

  【圭太編 第四話】



 史人さんの姿が完全に見えなくなると、圭太はぽつりと呟いた。
「とは言ったものの…どうすればいいんだろうな」

 そしてその場に腰を下ろし、独り言のように続ける。
「オレってホント馬鹿だよな。死んだ祈祷師の特殊能力を引き受けるなんて、
 夢みたいな話を信じてさ」

 それを聞いた私は、同じく座り込みながら、思っていたことを言葉にした。
「でも、そういうところが圭太の良いところだと思うよ」
「オレの良いところ?」
 うん、と私は頷く。

「圭太は素直な性格なんだよね。それってすごく良いことだと思う。
 だから私も圭太の言ったことを信じて、生け贄を断ったんだよ」

 圭太は驚いたような表情をしていたが、やがて優しく微笑んだ。
「さんきゅ、サヨ。お前は…限りなく優しいよな。
 どんなことも受け入れてくれてさ」

「そ、そうかなぁ?えへへ……はっ!」
 突如、私の頭に豆電球が灯った。

 受け…入れる……それだ!

「どうした?」
 首を傾げる圭太に、私は閃いた意見を伝えた。
 そう、力を制御するための。

「圭太は九頭竜の力をもらったんだよね。なら、契約も出来るんじゃない?」
「どういうことだ?」

「今、圭太は、力を与えた史人さんの支配下にある。
 だから、私と契約すれば、私が圭太の力を制御出来るんじゃないかな?」

 圭太はしばらくぽかーんとしていたが、やがて解釈したのか、うんうんと頷いた。
「確かにそうだ!すげぇなサヨ!っと、ちょっと待ってろ…」

 そう言うなり、圭太は目を閉じて俯いた。
 …どうしたのかな?

「圭太、何をしているの?」
 尋ねると、圭太は目を開いて答えた。

「どんな能力が使えるか、頭の中にインプットされてるみたいなんだ。
 で、その中から契約方法を探しているんだ」
「ほぇー」
 私が頷くと、圭太は再び目を閉じた。

 …数秒後、圭太が目を開いて言った。

「契約方法は分かった。だけど、契約相手…サヨへの負担が大きすぎる」
「なんだ、そんなことか。私はだい…」

 するとその時、圭太が私の肩をがしっと掴んだ。
 その力の強さに驚いて圭太を見ると、辛そうな表情をしていた。

「でもっ…オレはサヨのことが心配なんだ!お前の身に危険なことがあったら…」

 それを聞いた途端、心臓が高鳴っていくのが分かった。
 圭太はこんなにも私を想ってくれている——。

 こんな状況であるにも関わらず、私は嬉しくてたまらなかった。
 それを和らげるように、言葉を紡ぐ。

「私はどんなことも乗り越えてみせる。信じて」

「…!」
 圭太は目を見開いた。

 お願い、私を信じて…。

 その祈りが伝わったかのように、圭太は微笑みながらも力強く頷いた。
「分かった」