コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 禁断果実〜兄弟恋愛〜2【10/30更新】 ( No.109 )
日時: 2013/10/31 14:15
名前: ミム (ID: MbtYH2rf)

言葉が出てこない。

何か言わないと…!
皆を誤解させちゃう…!!
でも一体なんて言えばいいのか分からない。
あっ、そうだ!


「はいっ、オッケー!」


私は笑顔で軽く手を叩きながら言った。
翔さんは今にも「は?」と言ってしまいそうな顔をしていた。
しかしそんな事は無視をして私は一人芝居を続けた。


「さすが!これなら次のオーディション受かるかもね!よしっ、じゃあもう練習も済んだ事だしオーディション会場に向かうか!」


いつもより大きめの声で言う。
するとクラスの女子は翔さんに声を掛けた。


「翔、上手かったよ!」

「うんうん!もうサイコー♪」

「これは翔に決まりだねっ!」


よしよし、良い雰囲気になってきた。

私は現場を見図るとそこで教室から退場しようとした。
しかし女子達が私の前に立ちはだかる。


「で、いいんだけど…一体この子は何?」


来たか…!


「えっと…私はですね…あっ!マネージャーです!」

「マネージャー?」

「はい!じゃあそう言う事で…!!」

「えっ?ちょ!?」


必死に止めようとする彼女達の言葉を避け私は翔さんの腕を引っ張った。

公園に着くとひとまず私達はベンチに腰を下ろした。


「はぁー疲れたね…」

「おい。」

「ん?」


翔さんの方に自然に首を向けると翔さんは明らかに怒っていた。

どうしよう…
で、でも私が謝る事じゃないよ…!?
私は翔さんのアイドルの道を守ってあげたんだからっ。


「どういうことだ?」

「ど、どういう事ってそれはこっちの台詞です!だ、大体何であんな嘘つくんですか…!?」

「嘘…?」


その言葉に私はコクンと首を縦に振ると翔さんは表情を変えた。


「嘘に見えた?」

「え…えと…それは…」


本当は嘘に見えなかった。
だけどこの間テレビで好きな人いるって言ってたし…


「千歳ちゃん。」

「!?」


体がビクンと跳ねる。

ど、どうして…?
ううん…誤魔化しても無駄なんだ。
私は気付いてる。
この後翔さんが私に言う言葉を。


「嘘じゃないよ。」


そう、この言葉を聞いた時私の中で何かが崩れてしまうような気がしたから。
だから聞かないでおこうと思ってたのに…
でももう遅かった。


「俺は千歳ちゃんの事が好きだよ。」


翔さんの目は真っすぐと私の目を見ていた。

動けない…

だから尚更なのかもう冗談で返す事は出来ない。


「で、でも…テレビで…」

「えっ…もしかして見てくれてたの?」

「へっ…!?ち、違います!私は偶々テレビで翔さんを見ただけで———」


———ギュッ


その瞬間抱きしめられた。


「か、翔さん…!?」

「だとしても嬉しい。だってそれって俺に少しでも興味を持ってくれたってことでしょ?」

「そ、それは…」

「マジで嬉しい!」


そう言った翔さんの目は子犬の様にキラキラさせていた。

翔さん…
でも私には———


「前も言った通り彼氏がいるんですっ…」

「うん。知ってる。」


知ってるのにどうして…


「だけど俺は諦めない。例えその男がどんなに強敵でも。」

「っ………」


翔さんが言ったその言葉はこれから思い知らされることになろうとしていた。


30話 完