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- Re: 禁断果実〜兄弟恋愛〜2【10/10更新】 ( No.71 )
- 日時: 2013/10/10 21:16
- 名前: ミム (ID: TW1Zh9zP)
母は自分の顔に手を当て俯くと口をゆっくりと開いた。
「実はね、亮の事は記憶にないの。」
「っ………」
「後もう一人」
「もう一人…?」
もしかして———
「親父ですか…」
「えぇ…そうよ。」
やっぱりそうだったのか…
今日の親父は様子が可笑しかった。
いつもは太く逞しい声でしっかり話すのに、今日は声が小さく今にも消えてしまいそうだった。
千歳が俺と親父の記憶が無い…?
どうして俺と親父なんだ。
なぁ千歳教えてくれよ…
それから俺は千歳に何回も会いに行ったが、千歳は思い出してくれる事も無かった。
そのたびに俺は傷つき心がボロボロになっていった。
そしてある日母は俺に言った。
「もう会うのを止めましょう。」
「え…?」
「これは貴方の為なの。」
母は遊園地で会ったあの頃とは違っていた。
前はもっと表情が軟らかかったし優しく明るい感じの人だった。
だけど今は違う。
顔はもう疲れ切っていた。
「ごめんなさい。もうこれ以上千歳を混乱させたくないの。本当にごめんなさい…」
「………」
俺は儚げに泣く母を見て何も言えなかった。
「でもこれだけは分かって…私は貴方の事を今でも愛しているわ。もう少ししたらまた会いましょう。」
それがあの日以来最後の言葉だった。
そして俺は高校になり千歳と出会った。
最初は嘘だと思った。
千歳は随分成長し大人になっていたからだ。
千歳…
俺に気付いてくれ…
何度もそう願った。
だけど記憶もないのに気づくはずもなかった。
ある日の事、俺は佐々木(鈴)の存在に気付いた。
佐々木はあの日お見舞いに来ていた友達の中の一人だった。
それもあって俺達はお互い気付いていたのかもしれない。
そして佐々木から色々な事を聞いた。
千歳が俺の話をいつもしていた事———
それ以外にも色々聞いた。
だけど俺達は一つだけ約束していた。
それは「昔の事は思い出させない」と言う事だ。
理由は簡単な事だった。
しかし千歳は俺が遊園地に連れていったあの日から様子が可笑しくなっていった。
それを見かねた俺は佐々木に叩かれた。
そう俺は佐々木から何度も言われていた。
「あの遊園地には絶対に連れて行かないで」と。
でも俺は思い出して欲しくて連れて行ってしまった。
そして今に繋がる。
俺の欲が全てを狂わせた。
だけど俺はもう逃げない。
2人で愛し合って生きていくと決めた日から———
19話 完