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26話　翔視点


「何だよ、あいつ…」


俺はいつの間にか呟いていた。

男から見てもカッコいい男前と千歳ちゃんが抱きついていたからだ。

胸がバクバクする。

まさかあれが彼氏…


———バーン


俺はそこにあった椅子を思いっきり蹴っ飛ばした。

あんなに幸せそうな顔をして千歳ちゃんが笑ってる。
俺にはあんな態度なのに…
幻滅って何だよ…！？

そっと千歳ちゃんを触った自分の手に触れてみるとまだ熱が残っていた。


———ドキドキ


そして心臓がバクバクする。

俺もしかして…あいつの事…

そしてあの言葉が頭の中によみがえる。
『貴方には幻滅しました。もう私に近づかないでください。後…伊集院さんの事よろしくお願いします。今日はありがとうございました。』

そう言う千歳ちゃんの顔はまるで悪魔でも見るかのようだった。
いつもなら女の子に髪の毛を触ったり、キスをしたりしたら喜ばれていた。
だけど千歳ちゃんは違う…
千歳ちゃんはきっとあの男の事しか眼中に入ってないのだろう。


「ムカつく…」


自然と拳を握りしめていた。

手に入れたい。
あの笑顔、あの声、あの温もり———
すべてを…

だけど俺を好きになってくれるだろうか？
いや、俺が無理にでもそうさせてみる。
そう、必ず。


26話　完